はじめに

外国への投資はしないほうがいいですか?

多くの人から質問されることがあります。それは、低成長の日本国内だけでなく、アメリカやヨーロッパ、アジアの新興国など海外の投資はするべきか?という質問です。

今の日本経済は大きな時限爆弾を抱えているといっていいかもしれません。20世紀の後半から21世紀の初めまで、およそ50年間にわたって世界第2の経済大国だった日本ですが、かつては財政に対して厳しい規律がありました。

それは戦後のハイパーインフレなどで国民生活が壊滅的状態に追いやられた反省があるからで、今でも形式上は日本には財政に対してきちんと制限が設けられています。「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない」(財政法第4条)そうはっきり書かれてあるのです。

ところが、最初は公共事業を推進するために建設国債という名目で、そして、この30年近くは歳入と歳出の差異を埋めるために、本来は避けるべき赤字国債を発行し続けています。当初は例外として非常に抑制的だったものですが、最近はタガが外れたようになってきました。

そして、今や一定の条件のもとでは、国債などはいくらでも発行していい、事実上、返さなくていいのだという乱暴な理論をかざす人たちも出てきました。

国債の発行は、将来の日本国民や日本経済の大きな重石になります。ところが、目先の景気対策のために日本は驚くほどの債券を発行してしまいました。もはや返済ができないほどに膨らんでいます。その金額は1000兆円をはるかに超えているのです。

さらに、第2次安倍政権からは、健全性が求められる中央銀行が株式などリスクのある金融商品の買い入れを始め、今やそのバランスシートに大きな割合を占めています。

日本は、すでに超低成長国で超高齢化社会、人口減少時代も迎えています。日本円は比較的安全な通貨として、有事の際などに買われてきましたが、果たしてそのような国際的な信用がこの先も長く続くかどうかは断定できません。かつての日本と比べるとじわりと本質的なリスクが増していることだけは間違いないです。

これは先進国全体に共通する問題でもあるのですが、特に日本は深刻なのです。微妙なバランスの上に築かれた砂上の楼閣のようになりつつあるのかもしれません。そこに世界が注目したら、日本売りということがあるかもしれないのです。

そのためか富裕層を中心に日本円だけでなく外貨建ての資産を持つ人も増えています。これは、資産を増やそうというよりも、万が一の時のリスクを分散しておこう。日本円がダメになっても、ドルやユーロでの資産を持つことによって日本円が暴落した時にも、自らの資産が大きく減るリスクをできるだけ回避しようという考えです。

もちろん、外国に投資をする理由はそれだけではありません。

例えば、低金利の日本よりも高金利の海外に惹かれて外貨建て資産を持つ人もいます。

ただし、一時期大人気になった、アフリカの通貨やトルコリラ、オーストラリアドルなどに投資した人の顛末を見てもわかるように、高金利ということは、それなりの理由があるのです。高金利にして海外から資金を自国に呼び寄せたいのです。もしも、国に高い成長性があるのであれば、自然と資金は集まってきます。

しかし、それだけの経済的な魅力はない。そのために金利を高くしてお金を集めようとする。ですから、通貨が一気に大幅に下落して高金利で儲かったと思った分は吹っ飛ぶどころか、円で評価すると損失を出してしまった。そういうことになりかねません。

アジアなどの新興国への投資も注目されてはいます。例えば、中国やインド、東南アジアなどです。そのような国の株式や債券に投資する投資信託もあります。

しかし、じっくり見ていただきたいのです。信託報酬や為替など運用コスト、手数料が高くて結局は魅力に欠けることが多いものだからです。また、政治的な安定性に欠けている場合もあります。カントリーリスクも考えなくてはいけないのです。

そう考えてくると、外国投資はまずはS&P500、ニューヨークのダウなどアメリカの株式市場の代表的な指数のこれまたインデックスファンドへの投資が一番現実的なのではないかと思います。この30年の間に、それこそドルコスト平均法で投資したと計算すると、大きく資産を増やしているという実績もあります。ただし、過去がそうだったからとこれからも同じようになるとは限りません。

まあ、これは皆さんの金融資産が2000~3000万円くらいになってから、その一部を回していくということでいいのではないでしょうか?

それでも30代前半までの方は、まだこれから長い人生が待っていますから、日本と日本円、日本経済が未来に受けるかもしれないリスクはそれだけ大きいとも言えます。ですから、やや大きな割合を回すことも考えていいと思います。

これらも、日経平均やTOPIX連動型インデックスファンドでお話ししたように、大きく下げた時に資産の一部を移すことを考えてください。買うタイミングが大切です。

一つ付け加えておきたいことがあります。それは、アメリカの株式市場の国際性です。

アメリカの株式市場の良さの一つは、そこで上場している会社はアメリカ国内の会社だけではないことです。日本やヨーロッパ、中国やアジアの新興企業も上場基準に見合っていると積極的に進出します。このため、アメリカの株式市場は米国経済だけでなく、世界中の成長セクターの縮図のようになっているのです。

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