はじめに
世界中でマーケットプレイスの第三者流通総額比率が年々増加
次に注目しておきたいのがマーケットプレイスの成長だ。
マーケットプレイスは、アマゾン以外の第三者である販売事業者がアマゾンのストア内で商品が販売できるサービスで、個人から企業まで出品可能。出品者が支払う月額固定費(大口出品契約のみ)、販売手数料(注文成約時)と配送業務などの代行業務の内容に応じた代金がアマゾンの売上となる。
米国をはじめ世界中でマーケットプレイスでの第三者流通総額比率が年々増加しており、下記のグラフの通り、2018年度(2019年度以降は公開されていない)にはアマゾンの直販を含めた流通総額全体の58%になっている。
アマゾンはもともとアマゾン自身で商品の仕入れをし、在庫を持ち、販売価格を決め、直接、顧客に販売をする直販モデルから事業を始め、ときには赤字を出してまで競合他社との同一販売価格に固執し、顧客の信頼を勝ち得てきた。その低価格に加え、品揃え拡大や利便性向上の継続した訴求により顧客の信頼を得た。それが圧倒的な集客力として武器となり、マーケットプレイスで販売する事業者数を急速に伸ばし、Eコマースの巨大なプラットフォーム(情報、サービス、商品を展開する基盤、土台。たとえばグーグルは主に情報を展開するサービス)となったのである。
2021年のマーケットプレイスに出品する販売事業者数はグローバルで950万以上。販売事業者の多くは中小企業だが、アマゾンで販売することで、その販売事業者の地場の商圏内のみならず日本全国の顧客にアクセスができる。さらに海外のアマゾンのストアにも簡単に出品ができて、商圏を一挙に世界規模に拡大し、飛躍的にビジネスを拡大することも可能になる。
「ユーザーエクスペリエンス」の質と利便性の向上
マーケットプレイスは、アマゾンがそもそも自社で直販するために構築したEコマースの仕組みを、効率的、スピーディーな品揃えの拡大を目的として、第三者である販売事業者向けに提供しているサービスだ。
徹底的にカスタマーエクスペリエンス(顧客の経験)の質と利便性の向上を追求して構築したサービスをベースに他のビジネスを展開、拡張していく。この手法はアマゾンが展開する他の事業にも共通している。
たとえば、AWSを始めたきっかけは、米国のサンクスギビングデー(感謝祭)やクリスマスなどわずか年間数回のアクセス集中時のために抱えていたサーバーの余裕スペースを、何か他に活用できないかという発想だった。
また、「Amazon Pay(アマゾンペイ)」は、アマゾンの顧客がすでにアマゾンで登録をしている名前、住所、配送先リスト、クレジットカード番号などを利用するものだ。
他社サイトでショッピングをする際に入力が必要な同様の情報を入力する必要がなく、アマゾンでのログイン名、パスワードをそのサイトで入力すれば、すぐにショッピングができる顧客利便性の高いサービスである。
電子書籍の「Kindle(キンドル)」や、音楽や映画といったデジタルコンテンツ配信、そしてアマゾンプライムというサブスクリプションサービスなど、現在のアマゾンが提供し、各ジャンルでスタンダードとなっているサービスも、同じように徹底的に磨き上げたサービスの上に新しいサービスを積み上げて発展してきた。そして、今後も発展を続けていくのである。