はじめに
失敗を防ぐコツはリスクとリターンのバランス。セゾン投信株式会社代表取締役会長CEO中野晴啓氏と、ウェルスナビ株式会社代表取締役CEO柴山和久氏に、投資の失敗談を聞きました。
【前編】:「中長期的にはあるべき価格に収まっていく」セゾン投信・中野晴啓氏×ウェルスナビ・柴山和久氏が見る現在の市場
【中編】:株価下落、円安、値上げ…、そんな時代に資産をどう作っていけばいいか。セゾン投信・中野晴啓氏×ウェルスナビ・柴山和久氏に聞く
──投資は100戦100勝があり得ない世界といわれます。おふたりにも投資の失敗経験はありますか?
中野晴啓氏(以下中野):柴山さんは失敗したことがなさそうですね(笑)。
柴山和久氏(以下柴山):いや、あるんです(笑)。1つ挙げますと、最初に買った投信が失敗でした。当時、私は財務省勤務で、海外駐在時に海外の銀行の支店で投信を買いました。店舗の担当の人の対応が非常に丁寧で、気持ちが舞い上がってしまい、勧められるまま買うことになったのです。
中野:どんな投信だったのですか?
柴山:それが全く分かりません。その点がまさに失敗で、投信の中身を理解せずに買ってしまったのです。その時は、日本に帰る時に売ればいいと思っていたのですが、結局価格は上がらず、数年後に損切りすることになりました。今でも何に投資する投信だったか分かりませんし、どんなリターンがあるのかも分からず、リスクも把握していませんでした。
中野:それは貴重な経験談ですね。その話を共有していただいたことで、同じ買い方をして失敗する人が減ると思います。
柴山:個別株の投資でも失敗談があります。後から考えると選んだ銘柄は正しかったのですが、市場の期待が高まって株価が上がっていた時に買い、購入後に大きく下がって損が出たタイミングで売ってしまいました。今もその銘柄は市場にあって、私が売った価格より遥かに高くなっています。
中野:柴山さんが素晴らしいのは、失敗を振り返り、反省しているところですよね。投資家の中には失敗を振り返らず、「とんでもない会社だった」「騙された」と言い続ける人もいますから。
柴山:そうですね。中野さんはどんな失敗がありましたか?
中野:80年代後半のバブル経済時に大きな失敗をしました。当時は空前の株ブームで、猫も杓子も、同期入社で株のことを何も知らない人も株を買っていたくらいです。そんな中、私は2年目から運用業務をやっていたこともあって、「自分は勉強しているから分かる」「勝てる」と思い込み、長期投資には目もくれず、上がりそうな銘柄を当てに行っていました。
柴山:どんな銘柄を買っていたのですか?
中野:当初はあまりお金がありませんでしたので、手持ちのお金で買える低位株や東証一部の株を買っていました。ただ、値動きが小さく、徐々につまらなくなり、気づいたら値動きが大きい新興市場の銘柄ばかり見るようになっていったのです。しかも、当時は景気が良かったため、簡単にお金が借りられました。そのお金を原資にして、最大で2,000万円分くらいの株を買っていたのです。
柴山:借金して買う、ということですね。それは危ない(笑)。
中野:はい、完全な投機です。案の定、暴落がきて1,000万円くらいの損をします。それを売ったところで借金が残りますから、父親にお願いして穴埋めしようか、それとも自己破産しないといけないのかなどと考え、かなり追い込まれました。結局、残った1,000万円を1つの銘柄に突っ込み、それが運よく2倍になったので、株を売り、借りたお金を返して、もう投機はやめようと誓いました(笑)。