はじめに
今回は、トルコリラ中心に複数の通貨について説明します。トルコリラは、FX投資においては、一定程度の流通量のある中で代表的な高金利通貨と位置付けられる一方で、2010年代後半からは頻繁に暴落する通貨としても知られるようになってしまいました。
異例の長期下落は「人災」の可能性
まずは、代表的な高金利通貨ということについて。2020年3月の世界的な株価大暴落、「コロナ・ショック」を受けて世界中で金利は大幅に引き下げられました。こういった中で、さすがにトルコの政策金利、中央銀行が金融政策の目安とする金利も引き下げられましたが、それでも8%台までにとどまり、比較的早く10%以上に回復するところとなりました。
やはり高金利通貨として知られてきた南アフリカランドの政策金利が3%台まで引き下げられたことを考えると、トルコリラの相対的に高い金利は一際目立つところとなりました。ただそれほどまでに高い金利のトルコリラでありながら、比較的頻繁に「トルコリラ・ショック」といった暴落も含めて大幅な下落が続きました。
例えば、トルコリラ/円は2015年初めには50円を上回っていましたが、その後はほぼ下落傾向が続き、2021年には6円まで下落しました(図表1参照)。このように長期にわたる大幅な下落は、経済政策の失敗といった「人災」の影響が大きいといった具合に、現在のトルコ特有の原因によってもたらされている可能性がありそうです。
【図表1】トルコリラ/円の月足チャート(2015年~)
トルコ経済の最大の問題は、2022年6月の消費者物価の前年比上昇率が78%にも達するといった猛烈なインフレです。インフレ下では「モノ」の価値が高まるので、相対的に通貨価値の下落を招きます。そんな通貨価値の下落を回避するためには、利上げにより、金利面の魅力を高めるというのが基本の政策でしょう。
ところが、トルコのエルドアン大統領は、「インフレ対策にはむしろ利下げが有効」といった独特の持論があり、利上げに強く反対する姿勢を続けてきました。こういった中で、トルコリラは長期に渡り大幅な下落が続いたのです。
ちなみに、前回南アフリカランド編でご紹介した年間の高値を安値で割って計算するボラティリティ(年間最大変動率)をトルコリラ/円で計算すると、2021年は何と150.9%、2020年でも56.5%になりました。南アランド/円は、2021年が22.7%、2020年が39.3%でした。
2020年は3月にいわゆる「コロナ・ショック」の大乱高下が起こったこともあり、全般的にボラティリティが高くなりましたが、それにしてもトルコリラ/円のボラティリティの高さは図抜けた数字になっていることが再確認できるのではないでしょうか。