はじめに
トルコリラは産油国通貨ではない
さて、そんなトルコリラについて、意外と誤解されている可能性のある事を一つご紹介しましょうす。新興国は、資源や穀物の豊富な国が多いのですが、実はトルコは原油については輸入依存が高い国です。このため、トルコリラ/米ドルは「原油高=トルコリラ安((米ドル高))」といった関係が中長期的に展開してきました(図表2参照)。中東とアジア、欧州の狭間といった所在地からしても、むしろ産油国と思っている人が多いかもしれませんので、トルコの意外な真実といえるかもしれません。
【図表2】米ドル/トルコリラとWTI (2015年1月~2022年2月)
さて、最後にトルコリラの取引に影響するイベントについて確認します。これまで述べてきたように、猛烈なインフレが最大の経済的な問題なので、毎月初めに発表される消費者物価が注目されます。また、中央銀行の金融政策会合は、2022年の場合は毎月予定され、基本的に第2~3木曜日に開催される計画となっていました。
メキシコペソとカナダドル
今回は「通貨の特徴を正しく理解する」シリーズの最後となるため、他の通貨もいくつか紹介したいと思います。
まずはメキシコペソ。メキシコは産油国ですから、原油相場の影響を受ける産油国通貨の一つとしても知られています。そして米国の隣国ということで、米経済の影響も受けやすい通貨という側面があります。ネガティブな面では、米国が金融緩和から引き締めに転換すると、米国への資金還流が拡大することで、メキシコペソは通貨危機に見舞われるといったことがこれまでに何度かありました。
そんなメキシコペソの魅力は相対的に高い金利。ちなみに、2022年6月末現在で、メキシコの政策金利は7.75%。さすがにトルコの14%には及ばないものの、南アフリカの4.75%は大きく上回っていました。
最後にご紹介するのは、メキシコペソと似ている特徴、米国の隣国で産油国通貨の要素もあるカナダドルです。ただカナダは、G7サミット、いわゆる先進7ヵヶ国首脳会議のメンバーにも入っているくらいですから新興国ではありませんので、そこがメキシコとの大きな違いです。
新興国に対して、成熟した先進国経済では、基本的にはインフレ率が安定していることから、新興国に比べて金利は低いのが普通。カナダの政策金利は、2022年6月末現在で1.5%なので、既に見てきたメキシコの7.75%とはかなり差があることがわかるでしょう。