はじめに

企業型DCだからこその5つの注意点とその対処法

注意点(1)
企業型DCが導入されて10年以上経過している会社の場合、商品ラインアップがあまり良くないケースもあります。確定拠出年金用に設定されている投資信託は、購入時の手数料がかからず信託報酬も低めなのですが、企業型DCの運用商品が世間にさらされる機会がないため、最近のコスト引き下げ競争から取り残されていることもあります。また運用商品が偏りすぎていて、効率的なポートフォリオが組めないような商品ラインアップのケースもあります。その場合はNISAや課税口座も含めた投資信託選びを考えましょう。

注意点(2)
企業型DCは勤めている会社独自の企業年金です。従ってその会社を辞める時は企業型DCを辞める時となります。とはいえ、60歳までは原則止められないのが確定拠出年金ですから、必ず次の会社の企業型DCかiDeCoに資金を移換しなければなりません。その際、企業型DCの投資信託はすべて売却され現金化されるということを理解している人はあまり多くはありません。知らずに会社を辞めてしまい、タイミング悪く投資信託が精算され、想定外の損失を抱えてしまうことがあります。

また精算後も放置していると、国の管理の下に「自動移換」されてしまい、その後は運用もされず、加入期間とも認められず、手数料だけを差し引かれるという悲惨な状況に陥ります。転職を考えている方は心得ましょう。

注意点(3)
会社が拠出する掛金が少額でマッチング拠出にうまみがないケースもあります。会社の掛金とは別に個人が拠出できるマッチングはiDeCo同様全額が所得控除となるので、ぜひ利用したいところですが、会社の拠出する掛金を上回ってはいけないというルールがあります。もし会社の掛金が数千円だという場合は10月から解禁になるiDeCoの併用加入を検討しましょう。この場合月20,000円まで拠出可能です。

iDeCo併用加入時のメリット・デメリットについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
参照:事前受付を開始したiDeCoと企業型DCとの併用加入、メリットとデメリットを解説

注意点(4)
会社が拠出する掛金を「給与として受取るか」「確定拠出年金の掛金として受取るか」が選択できるのが前払い退職金制度です。前述した通り、給与で掛金を受取ると税金と社会保険料が差し引かれた分のみが受取ですから、将来のためにお金を回したい方は、確定拠出年金を選ぶべきです。

しかし、確定拠出年金はいったん加入すると60歳までは資金の引き出しが原則できませんから、それを嫌う方は給与での受取を選びます。特に外国人の方など60歳までに母国に帰られる可能性のある方は、脱退一時金の要件が緩和されたとはいえ、かなり引き出し条件は厳しいので、給与を選ぶ方が無難かもしれません。

注意点(5)
会社からの掛金拠出がなく、自分の給与から掛金を拠出するタイプの「給与減額方式」の場合は、社会保険給付の減少も併せて判断しましょう。自分の給与から拠出する掛金は社会保険料の算定から外れるため、社会保険料負担が減ります。しかし結果として給付も減少してしまうのです。特に病気で長期療養が必要な際、会社員は健康保険から傷病手当金が支給されますが、給与減額方式で3万円拠出すると1日あたり666円手当が減少します。この手当は最長で1年6ヵ月支給されるものですから場合によっては老後の貯蓄をしたがために手当が減ってしまい生活が困窮するということも起こり得ます。

同様に出産手当金、育児休業給付金、介護休業給付金、失業時の基本手当、老齢厚生年金、遺族厚生年金、障害厚生年金等も影響します。会社によっては、残業代の計算の際に掛金分が含まれないところもあります。給付の減少等を避けるためには、iDeCoの併用加入を検討しましょう。給与減額で拠出した掛金は、登録上は会社の掛金とみなされるため、別途iDeCoで拠出が可能です。iDeCoであれば、上記のような各種給付の減少は抑えられます。

制度理解が重要

自分がいかに恵まれているかは他人から言われてはじめて気づくものかもしれません。しかし、置かれた環境はひとそれぞれ、まずは制度の理解を深めましょう。ただ確定拠出年金は与えられただけでは、何にもなりません。自らが資産運用の知識を深め行動を起こさなければ満足のいく結果にたどり着けない制度だということを認識することが非常に重要です。

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