はじめに
税金を考えて運用資産を選ぶ
次に、どんな資産で運用するかについてです。大きく分けて、「資産を増やすフェーズ」と「守りながら使うフェーズ」に分けられます。
「資産を増やすフェーズ」では、配当を受け取らずに再投資される資産のほうが、税金面で有利になります。一度配当としてもらってしまうと、課税されてから再投資をすることになります。配当がなく自動的に再投資される資産なら、税引き前の金額を再投資し、最終的に取り崩すときに税金がかかります。
結局同じに感じるかもしれませんが、実は後者のように「税金を先延ばし」するほうが、資産は増えるのです(これについては、第2章で詳しくシミュレーションをします)。そのため、配当が出ない資産のほうが増えるペースは早くなります。
しかし、「守りながら使うフェーズ」になると、配当が出る資産のほうが運用が楽になります。自分で取り崩そうとすると市況を見てしまい、お金を引き出すタイミングを迷ってしまうからです。これについては、なるべく放置できることを優先する人は配当が出る資産を、自分でポートフォリオを調整することが苦ではない人は配当が出ない資産を活用しながら、もしくは配当が出ない資産と配当が出る資産を併用しながらの運用になるでしょう。
また、税金も重要です。海外資産を中心としてFIREするのが1つの王道になっていますが、税金も考慮すると、日本の高配当株の魅力が増します。金融資産の譲渡益、配当利益には20.315%の税金がかかります。しかし、日本の株式や投資信託は、配当控除
を使って最大で5%まで税金を減らすことができます。
たしかに、将来的なリターンを考えれば米国などの海外資産は魅力的ですが、税金の差は複利で考えると大きいものです。ただし、所得額によってメリットの大きさは変わります。特にFIRE後の課税総所得金額が年間330万円以下になりそうな人には大きな差になります。
以上、FIREはとても話題を呼んでいますが、簡単なものではありません。基本的には、収入・支出の少なさ・運用利回りのどれかを突出させることができれば、若くして達成することも可能でしょう。
もしそうでない場合は、50代のプチFIREが現実的です。また、お金をたくさん余らせて人生を終えるのも、なんだかもったいない気がします。適度に取り崩しながら運用をするのが「幸福度の最大化」につながるでしょう。