はじめに

会社にとってのiDeCo+導入メリット

もちろん会社にとってもメリットがあります。iDeCo+は退職金制度ではありませんが、それに準じるものとして認められていますので求人の強みになります。本来退職金制度は、全社員に対し一定のルールを定め準備するものですが、iDeCo+の事業主掛金はiDeCo加入者でかつ事業主掛金を希望する者だけに拠出します。退職金制度までは負担が重いという会社にとって、iDeCo+はより導入しやすい制度でしょう。

事業主掛金は全額損金(経費)として計上できる点もメリットです。また給与と異なり事業主掛金には法定福利費の負担が不要です。通常、給与1万円に対し約15%の法定福利費を会社は負担していますが、事業主掛金ならそれがいらないのですから、負担の軽い賃金アップともいえます。

事業主掛金は、勤続年数で金額を変えることもできます。より長く働いた社員には、より多くというインセンティブが設定できれば、社員の働くモチベーションアップにもつながります。事業主掛金は1,000円以上22,000円の間で、1,000円刻みで決められます。

iDeCo+の対象となる会社にお勤めの方のiDeCoの掛金は最低5,000円、最高23,000円ですから、加入者は事業主掛金との合計がこの範囲内になるようにします。例えば、事業主掛金が4,000円であれば、加入者掛金は1,000円でiDeCoが始められます。またこの場合、加入者掛金の上限は19,000円です。

制度を導入する際には国民年金基金連合会に会社が申請をします。制度導入までには2カ月くらい時間がかかるようです。また年に1回加入者の状況に関するお尋ねが来ますので、これにも対応します。

iDeCo+導入の注意点

iDeCo+を導入する際に気を付けなければいけないこともあります。その一つが、加入者掛金はすべて給与天引きとする点です。したがって、すでにiDeCoを個人払い込みで行っている方は自身の運営管理機関に対し、事業主払い込みに変更する手続きを行います。

また会社としても、毎月の給与計算の際に加入者掛金を天引きし、その金額を課税対象から外す処理を行わなければなりません。事業主払い込みにすると、年末に控除の証明書が発行されないので、天引きに関する事務処理の整備は重要です。さらにiDeCoの加入者掛金は年に1回変更が可能なので、運営管理機関だけではなく、会社にもきちんと変更の申し出をするようにルール決めもします。

筆者はiDeCo+の導入サポートを依頼されることもあります。その際、天引きした加入者掛金と事業主掛金は、加入者それぞれの運営管理機関に会社が振り込みをする必要があるのではないかとご心配されることも多いのです。しかし、この作業は国民年金基金連合会が一括で会社指定の口座から全対象者分の掛金を引き去り、そのうえで各加入者のiDeCo口座に振り分けますので、面倒はありません。会社としての事務負担がないわけではありませんが、事前に準備をしておけば問題ない程度です。


社員から会社に制度導入を要求するのは簡単なことではないかもしれませんが、せっかくこのような法律ができたのですから、勇気を出して声をあげてみていただきたいと思います。

また経営や人事に携わっていらっしゃる方がこの記事を読んでいただけていましたら、御社でも導入を検討していただけると嬉しいです。社員を大切にしたいという想いを形にする一つの方法として、iDeCo+は有効だと考えます。

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