はじめに

池袋の「ワンルームマンション税」

豊島区はこれまで、人口問題に悩んでいました。

豊島区は、世帯の63%が単身という、異常な「独身者集中地域」です。そして30㎡未満の狭い住宅(ワンルームマンションなど)が、全体の住宅の40%を占めています(豊島区ホームページより)。いずれも、東京23区でトップクラスです。

狭い住宅が多いから単身者が多いのか、単身者が多いから狭い住宅が増えたのかはわかりません。とにかく、若い人は増えても子どもは増えず、外国人や学生など「いずれ出ていく人」ばかりが住む場所となっているのです。

「豊島区に定住する人を増やしたい。そのためには単身向け住宅を減らし、ファミリー向け住宅を増やさなくてはいけない」。そう考えた区は、2004年に「狭小住戸集合住宅税」、いわゆる「ワンルームマンション税」をつくります。納税義務者となるのは建築主です。課税の内容は、「30㎡未満の部屋を持つ集合住宅を建設した際に、1戸あたり50万円を課す」というものです。

8戸以下の集合住宅は免税となるため、アパートなどは免税となる可能性が高くなります。必然的に、ワンルームマンションが主な課税対象になるわけです。

しかし、人口動態はすぐには改善されなかったようです。

豊島区は2014年、国家戦略を検討する日本創成会議から、東京23区で唯一「消滅可能性都市」の認定を受け、「2040年に消滅する可能性がある」と指摘されました。

消滅可能性都市とは、少子高齢化の加速などにより、自治体として維持できないほどの人口減に見舞われる地域のことを指します。人口動態だけではなく、さまざまな条件を分析したうえで認定が行われました。

日本創成会議は、日本のシンクタンクである公益財団法人「日本生産性本部」によってつくられたものです。民間の団体ではありますが、公的な性質も有しています。そういう団体から消滅可能性都市の認定をされたことで、豊島区の関係者も相当のショックを受けたようです。

豊島区は、日本有数の繁華街・池袋を擁した東京の中枢区です。消滅可能性とはもっとも縁遠い場所だと見られていました。そのため日本創成会議からの認定は、かなり衝撃的なニュースとして取り上げられました。

それにしても池袋を擁する自治体が消滅可能性都市の認定を受けるとは、日本人としては非常に怖い気がしますね。日本の少子高齢化はここまで進んでしまったのか、と。

都市部の住民にだけ課せられる「都市計画税」とは?

都市部では、固定資産税に上乗せする形で「都市計画税」が課せられています。これは都市計画法で「市街化区域」(栄えている地域、今後整備が進められる地域)として定義された土地、建物などに課せられるものです。

都市計画税は使途に明確な目的を持つ「目的税」であり、税収は「公園・道路・下水道などの都市計画事業や土地区画整理事業に充てられる」ということになっています。

納税するのは土地や建物の所有者です。ただし賃貸の場合も家賃にこの税金が含まれるので、実質的には都市部のすべての住民は負担していることになります。

固定資産税の場合は、税率が1.4%に固定されており、自治体によるばらつきはあまりありません。一方で都市計画税は、各自治体によって税率などが異なります。

税率は0.3%が上限となっているのですが、0.3%までの範囲内で各自治体が自由に設定しています。

たとえば、東京23区の都市計画税の税率は0.3%ですが、隣接する千葉県松戸市の税率は0.23%。一方で、千葉県船橋市の税率は0.3%です。

船橋市と松戸市は同じ千葉県にあり、都心へのアクセス時間もあまり変わらないにもかかわらず、都市計画税の税率はかなり違うのです。そのせいもあってか、家賃相場は船橋市の方が松戸市よりも1万円程度高くなっています。

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