はじめに
準備が9割! 「負動産」にしないために、いつからどんなことを決めておく?
親がいつまでも元気とは限らない
相続をスムーズに行なうには、準備が大切です。
特に、相続財産のなかに実家の不動産が含まれている場合は、それを将来的に「負動産」にしないためにも、早いうちから対策をスタートさせておきましょう。
いつぐらいから始めればいいのかと疑問に思うかもしれませんが、これについて明確な答えはありません。
少なくとも親や自分の年齢が目安になることはないでしょう。今は元気に見える親も、いつまで健康でいられるかはわからないからです。
私の母は54歳という若さで亡くなりました。私が28歳の時です。まさかそのような年で亡くなるとは思っていませんでしたが、一般的には特別珍しいこととはいえません。
厚生労働省「簡易生命表(令和2年)」を元に算出すると、主な年齢の死亡率(1年の間に亡くなる確率)は次のようになります。
- 50歳男性の死亡率 0.245%
- 50歳女性の死亡率 0.145%
- 60歳男性の死亡率 0.623%
- 60歳女性の死亡率 0.281%
- 70歳男性の死亡率 1.676%
- 70歳女性の死亡率 0.679%
たとえば60歳男性なら160人に1人、60歳女性なら355人に1人が、1年以内に亡くなるということです。
これを多いととるか少ないととるか、感じ方は人それぞれです。ただ、死亡率は年とともに徐々に上がっていきます。自分の親がいつまでも元気とは限りません。
そう考えると、相続について考え始めた今が、準備をするスタートラインと思ってもいいかもしれません。
一次相続が発生した時がいい機会
とりわけ真剣に考え始めるのに適したタイミングは、 両親のどちらかが亡くなり、片親になった時(一次相続) です。
たとえば父親が亡くなり、母親が残されたとします。この場合、母親と自分たち子どもが法定相続人になります。
この時は、否が応でも家族で財産について話し合わなければなりません。
多くの家庭で、母親がまだまだ元気なうちは、とりあえずは母親が、今後の生活のために全部の遺産を相続するという結論になることが多いでしょう。
そこで「自分たちは面倒な相続手続きから逃れられた」などと考えてはいけません。
いつ母親が亡くなり、二度目の相続(二次相続)が発生するとも限らないからです。
親の問題ではありますが、自分の問題でもあるのです。
だからこそ、 一次相続によって偶然発生した話し合いの機会を逃してはいけません 。この機会に、将来発生する相続についても話し合っておくことが大切です。
「お母さんは将来的にどうしたいの?」「もし介護が必要になって1人で家に住めなくなったらどうする?」というふうに、要望を引き出すようにしてください。
そのついでにエンディングノートや遺言書の作成もお願いしてみるとよいでしょう。
一方、親にとっても、自分の配偶者が亡くなった時は、子どもたちへの相続を考える一つのきっかけになります。
自分のことですから、主導権を握って話し合いを進めやすいはずです。子どもたちを集めて、自分の思いを伝えてください。また、子どもたちの考え(自宅を残してほしいかなど)も聞いてみるようにしましょう。