はじめに

貸倒引当金(未回収の売掛金に備えてリスクを経費計上)

もし事業収入が「月末締め翌月◯日払い」という形式で取引をしている場合、「商品やサービスを提供し終えいているのに、まだお金をもらっていない」ということが起こります。このまだ受け取っていないお金を「売掛金」と呼んでいます。

売掛金は「現金はもらっていないけど、この金額は将来入ってくるはず」という金額のことで、価値のあるものとして、個人事業主の「資産」として把握されます。「未収入金」や「貸付金」というものも同様に把握されます。この中で、支払いの悪い取引先があった場合、売掛金などの金額が踏み倒される可能性があります。

そんな「支払われずに踏み倒されるリスク」を経費として計算できる、という制度です。売掛金など、まだもらっていない金額に対して5.5%を「貸倒引当金」という科目で「負債」として計上し、「貸倒引当金繰入」という科目で経費にしておくことができます。

少額減価償却資産

30万円未満の減価償却資産を1度に経費として落とせます。パソコンや自動車など、1年で使いきらずに何年も使用するものは、10万円以上であれば「固定資産」といって「資産」として計上しておいて、使う年数で割った金額を少しずつ経費として落としていくことができます。その際の経費は「減価償却費」という科目で処理します。

使う年数のことを「耐用年数」といい、その物の用途や構造によって年数が決まっています。

青色申告なら10万円以上の固定資産であっても、30万円未満なら少額の減価償却資産として、一度に経費にしてOKということです。20万円ほどのパソコンなども、一度に経費になるのです。手間も省けて早いタイミングで経費にでき、その分、手元に資金が残るので設備や来年度の備えなど、事業に投資できるので良いことだらけですね。

この「少額減価償却資産」として一度に経費にできる金額は、年間300万円までを限度として、確定申告の時提出する「青色決算書」の3ページ目にある「減価償却費の計算」という一覧表に「少額減価償却資産の合計金額」を記入し、「租税特別措置法第28条の2を適用して経費をあげています」という意味で「措法28の2」と記入が必要です。

画像:国税庁『「減価償却費の計算」記載例』より引用

開業届けを出すべき人、出さないほうがいい人

それでは、開業届を出すべきかどうかの判断は、どこですれば良いのでしょうか?

「青色申告の特典」とされている税金の優遇を受けて節税が可能な人は、開業届を出すべきです。ただし、申告不要の要件もあるので、あわせて見てみましょう。

所得20万円の壁

年末調整済みの給与所得がある人で、給与以外の所得(つまりもうけ)が20万円以下の場合は所得税の確定申告をしなくてよい、というルールがあります。開業届を出してしまうと、どんなにもうけが少なかったとしても必ず確定申告が必要になるので、もうけが1円以上出て20万円以下なら、開業届を出さずに確定申告を省略すればよいでしょう。

2022年10月5日(水)現在、パブリック・コメントに掲載された「副業300万円以下」のルールが明確でないため、はっきりと申し上げにくいものの、パブリック・コメント通りにルール設定されてしまうと、令和4年分からは副業収入より給与収入が多い方で、かつ副業収入が300万円以下の場合は開業届を出したとしても「雑所得」として取り扱われるため、たとえ帳簿をキッチリつけていたとしても、青色申告の特典は使えないことになってしまうので、開業届を出すメリットは無いといえます。

  • 副業収入が給与収入より多い
  • 副業の収入が300万円を超える

ルール変更があっても、上記いずれかの場合は開業届とあわせて「青色申告承認申請書」を提出し、複式簿記の帳簿をつけることで、上記の青色申告のメリットを活用できますので、開業届を提出して節税(事業所得がマイナスの場合は来年以降でプラスの利益が出た時に節税)が可能になります。

ルール変更が実現すると、確定申告の手間だけが増えてしまい、なんて……嘆かわしい! ということになりかねません。開業届を提出する際は、慎重に判断をしましょう。

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