はじめに

Z世代が企業の主力になる──「共感」のマネジメントが重要に

2030年にはZ世代が30代前後となり、企業の主力となっていきます。

Z世代は、それまでの世代とさまざまな点で価値観が異なると指摘されています。具体的には以下のような点です。

⃝ 物心がついた時にはインターネットのブロードバンド環境があった、真のデジタル・ネイティブ世代
⃝ SNSやスマホを使いこなす
⃝ 個人主義や「自分らしさ」へのこだわりが日本人としては強い
⃝ 社会問題への関心が強い
⃝ 特定の企業に対する帰属意識が弱い
⃝ 能力開発に対する関心が強い
⃝ 日本が元気だった時代を知らない

日本企業はよくも悪くも同質性が高く、特にゼネラリストについてはメンバーシップ型雇用により「会社の色に染める」ということが重視されてきました。

一方で、Z世代は自分らしさを重視しますから、容易には会社の色に染まりません。特に、不合理と彼らが考えることはしたがりません。例えば、意味のないと思われる残業や「雑巾がけ」的な仕事です。こうした仕事を押し付けることは、やる気を削ぐだけではなく、嫌悪感を引き起こすことにつながりかねません。

「18時になったから帰ります」「明日は絶対に趣味の時間に使いたいので休みたいです」と主張する人間も増えることが予想されています。特定の会社に対する帰属意識も弱いですから、「自分らしくいられない」と考えると転職もいとわないことが想定されます。Z世代以前の管理職にとっては、非常にマネジメントが難しい世代と言えます。そうした人材がどんどんマネジャー層へと成長していくのです。

一方で、人間である以上、普遍のものもあります。内発的な動機が湧くものには熱中する、自分の有能さが証明される仕事をしたがる、自己実現欲求や承認欲求、愛と所属の欲求を満たしたい、などです。

上司としては、それまでの世代以上に丁寧にコミュニケーションや観察をし、彼らが何に価値観を抱いているかを理解することが必要になります。 上意下達の一方的な命令方式は通用しにくくなり、丁寧な説明やコーチングなどが今まで以上に重要になってきます。

また、 業務のアサインメントについても、彼らが価値を感じるものを中心に考える必要性が生じるでしょう (もちろん、すべての仕事をそれで満たすことはできないので、バランスが重要です)。プライベートを重視する人も増えますから、それに合わせた仕事の割り振りも求められます。

キーワードは「共感」でしょう。 彼らの考え方や嗜好をリスペクトしたうえで、どうやったら同じ方向に向けて一緒に頑張っていけるかをしっかり考える ことが必要です。

マネジメントの基本は個別対応です。「Z世代」とひとくくりにするのではなく、一人ひとりの個性に応じたマネジメントが必要になります。

Z世代のマネジメントの難しさについて述べましたが、一方で、彼らは 社会的価値やダイバーシティに対しては柔軟 です。また、 ITに対する感度は高い ですから、それは活かしたいところです。

例えば、業務の中に社会貢献的な要素をより盛り込むことで、彼らのモチベーションが上がる可能性があります。あるいは、デジタル関係の事柄については、彼らからの提言をどんどん取り入れることが、会社をよい方向に導くかもしれません。

彼らは、「自分は自分」と言いつつも、その会社に入った理由は必ずあります。特に経営理念やビジョンへの共感は大切です。それを軸に据えながらも、彼ら個々のニーズを充足することが、マネジメントの基本となるでしょう。

リモートワークがさらに普及する──コミュニケーションが課題に

2020年から続いている新型コロナ禍は多くの人々の生活に影響を与えました。その中には、プラスの効用もありました。それは、リモートワークでもある程度は仕事の成果は出せることが分かったということです。Zoomに代表されるオンライン会議ツールの進化も、これを後押ししました。

もちろん、物理的にどうしても人と接さざるを得ない仕事(例:医師の診察)や、リモートではやりにくい仕事(例:新規顧客への営業)などもありますが、ホワイトカラーの仕事の多くの部分は、リモートワークでもある程度こなせることが分かったのです。これは、ICTツールの進化と相まって、2030年にはさらに加速するでしょう。

リモートワークのダイレクトなメリットとしては、通勤時間を減らせること、出張関連の時間や費用を減らせることなどがあります。

通勤時間は、スマホでの情報収集や勉強の時間にも充てることができるとはいえ、1日の時間の中でも最も無駄な時間とも言えるもので、それを削減できることは、個人にとっても企業にとっても大きなメリットです。出張も同様です。

単身赴任や急な転勤といった個人に犠牲を強いる働き方から脱却できることも大きなメリットです。すでに現在でも、ホワイトカラーについては転勤を止める方針を打ち出す企業が増えています。これは働き方改革にもつながりますから、さらに多くの企業で導入されるでしょう。

高齢化が進む中で、介護の効率化を促す可能性もあります。

一方でリモートワークのデメリットもあります。リサーチの結果、コミュニケーションの量や質はチームのパフォーマンスと緩やかな相関があることが知られています。 2022年時点では、コミュニケーションに関しては、リアルの職場に比べると、リモートワークではどうしても質・量とも下がってしまいます。それをどう補うのかが、2030年に向けての大きな課題となる でしょう。通常はミーティングをするほどのことではなくとも、気軽に話を聞いたり相談したりできる雰囲気作りが大切です。

部下の評価なども、一般的には難しくなります。すでにアウトプット管理を導入している企業も増えていますが、その動きをさらに加速させることも必要でしょう。つまり、 プロセスも重要ではあるものの、結果(アウトプット)で人を評価する ということです。特に管理職以上については、それが言えるでしょう。

難しいのは、まだ指導の必要性が高く、また、結果だけではなくプロセスについても評価しなくてはならない若手への対応です。「仕事ぶり」というものはリモートのみでは把握しにくいですし、手取り足取りの指導も困難です。 プロセス型のKPIや途中成果物の確認などの可視化に加え、どのように働いているのかを可視化する仕組みの導入も必要 でしょう。プライバシー保護の問題との兼ね合いにはなりますが、リモートワークの様子を上司が確認できるようなモニタリングシステムも必要となるかもしれません。

仕事術については、阿吽の呼吸で伝えるのではなく、しっかり言語化、文書化し、横展開することの必要性も増すでしょう。 暗黙知をしっかり形式知化する ということです。

リモートワークのもう1つの課題は、組織のサイロ化です。リモートワーク中心だと、どうしても他部署とのコミュニケーションがリアルのオフィスに比べ希薄になってしまうのです。これは、単に業務の非効率化を招くだけではなく、組織に眠る知恵の活用を妨げ、イノベーションなども生まれにくくなります。

最新のICTツールを活用したり、リアルでの接触の場を一定レベル設けたりといった工夫が必要となるでしょう。

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