はじめに
社外との協業・コミュニティが増える──人を集めるには、どうするか?
組織の垣根がますます低くなる2030年は、社外の人々と協業したり、自社を軸にしたコミュニティを作ったりして、そこに多くの優秀な人々が(関与の濃淡はあっても)集ってくれることが望ましい時代となるでしょう。その時に必要な要件を、ここでは3つ挙げます。
1つ目は、コミュニティ作りに関連する話ですが、面白い目的を設定することが大切です。目的がまったくなければ人は集まってきませんが、 「利益を出しましょう」という話だけでも魅力は感じてもらえません。 SDGsでも社会問題解決でも人作りでも構いませんが、「面白そう。このコミュニティにいると自分のためにもなるし、Win-Winの関係性が構築できそう」「このコミュニティで頑張っている自分を誇れる」と思ってもらえることが大切です。
2030年頃は、 今以上に「パーパス」や「ビーイング」(何をするかではなく、どうあるべきか)ということに注目が集まる と予想されています。その時に、その組織の根源的な目的がある程度見えやすいと、人が集まってくるのです。
2つ目は、 社外の人々を惹きつける人材のユニークさ です。
人はやはり、一緒にいて面白いと感じられる人、あるいは学びになると感じられる人などと付き合いたいと考えるものです。いい人がいる、尊敬できる人がいる、最先端を行っている人がいる。だから自分もそこに参加したい、というのは人間の本能でしょう。
そうした人々を社内で育成する、あるいは外から集めることができれば、加速度的にコミュニティが大きくなっていきます。
「この人とこの人を足すと、このような面白い場が生まれる」という発想も必要でしょう。
なお、ここでもITツールの活用は必須です。2030年には、現在のSNSなどに加え、さらにネットワーキング、マッチングのためのITサービスが充実していることが予測されます。それを研究して、どんどん取り入れることも求められます。
自社の周りにいい人が集まり、必要に応じて(オンデマンド的に)一緒にプロジェクトを遂行していこうというやり方を推進できる企業は強い でしょう。その際、相手の期待するスピード感から遅れないためにも、 社内の意思決定スピードなどを上げる ことも求められます。
逆に言えば、こうしたことをしっかりやらず、社内に閉じて、限られた人材で、スピード感なくいろいろなことをやろうとするからこそ、日本企業の生産性が低く留まっているとも言えます。
3つ目は、ITシステムの活用です。
日本企業の場合、協業相手ごとに「擦り合わせ的」にスクラッチで業務プロセスを作ることがまだまだ多いです。しかし、これは非効率です。
現在でも先端企業は、例えばリクルーティングをアウトソースする際には、ITのシステムにちゃんと乗ってもらう形で、これを行います。すでに基幹システムがあるのだから、業務のためにシステムの方を変えるというやり方はしないわけです。
分業も、「この部分については我々、この部分についてはそちらでお願いします」という形の分業が効果的です。モジュール単位で協力していくと言ってもいいでしょう。これはコミュニケーションコストを下げることにもつながります。
また、人間が入るとミスをしやすくなりますし、属人性が大きくなると引き継ぎが面倒になるという側面もあります。それゆえ、できるだけ人間に属人的に関与させない形の業務プロセス設計が効果的です。特に対面である必要性の低いバックオフィス的な業務については、その推進が必要です(もちろん、完全にITシステムに乗せることはできませんが、可能な限り、それを行うことが効率的ということです)。