はじめに
リサイクルショップで「高めの商品」が売れるようになった理由
もう一つ、少し異なる角度からの事例を挙げたい。千葉県でリサイクルショップチェーンを展開している、ケーヨーテクノの店舗「愛品館・愛品倶楽部」でのものだ。
同社では社長・山岸勇祐氏を筆頭に、各店が「価値を伝える」ことに注力しているが、まずは同社・柏店での事例だ。
同店ではかつて、商品に品名と価格、そして「○○に汚れ、○○に傷があります」などの注釈を入れていた。この店に限らず、リサイクルショップでは基本、このような展示をしていることがほとんどだ。
それを店長・山田新志氏は、あるとき、打ち出し方を変えた。この店では買い取った品のメンテナンスにも力を入れているため、それをむしろ強調することにしたのだ。
たとえば、「染み抜きマスターの渾身のメンテナンス」などのコピーをより目立つように配置したところ、明らかに高額なものが売れるようになった。今では店頭にメンテナンスの際の動画を流すなどして、さらに顧客に訴求している。
同社・江戸川店でも同様の取り組みがある。
店長・大藤正義氏は、たとえば洗濯機の分解洗浄までしている店は多くないと考え、そのことを画像も交え店頭でしっかり訴求した。
すると、それらの洗濯機はたちまち完売。通常の売価より、1000円~2000円高めに設定していたにもかかわらずだ。お客さんからも「ここまでやっているのなら安心だわ」などの声をいただいているという。
「ビニール袋1枚」で新品並みに
さらに、こんな例もある。愛品館・八千代店での事例だ。
ある日、同店に冷蔵庫の買い取り持ち込みがあった。状態も良く、対応した店長・鶴丸倫久氏も「きれいだな」と感じたが、特にそう感じたのは、卵トレイや製氷皿などの付属品が、ビニール袋に入ったままの状態だったことだ。結果、状態良好と判断し、高額で買い取りした。
そのとき、彼はふと気づいた。「うちの冷蔵庫(販売品)、付属品むき出しじゃない?」。
それからあわてて付属品をビニール袋に詰め直して販売し始めると、今までよりも一層「おたくの商品きれいだね」との声をいただけるようになり、冷蔵庫の販売台数は前月と比較して3割近く上がった。
だが、より顕著だったのは売上だ。いきなり前月比で2倍以上になったのである。
台数以上に売上が伸びたのは、単価が上がったからだ。それはすなわち、「より高く売れた」ということであり、お客さんがその価格で妥当だと評価した結果だ。
この取り組みの前とあとの写真を比べてみると、確かに同じ冷蔵庫なのに改善後のほうが新品に近く感じる。お客さんがそう「感じる」ことで、実際に売価を上げることができたのだが、これは「価格」というものの本質を物語っている。