はじめに
一足早く小売企業の決算出揃う
ここからは日本のトピックに移っていきましょう。まもなく3月決算企業の中間決算の発表が本格化しますが、その前に小売業を中心とした2月や8月決算企業の決算発表がほぼ出揃いました。
まず、TOPIXと小売業の株価パフォーマンスを比較すると、以下のグラフのように小売業の好パフォーマンスが目立ちます。これはコロナ禍からの正常化による恩恵への期待、中でも外国人観光客(インバウンド)の訪日による恩恵期待が高いと思われます。以前と同様に外国人観光客が本格的に日本に来るようになれば、年間5兆円かそれ以上の消費が期待されています。ホテルや鉄道、観光、小売などは最も恩恵を受けやすい業種でしょう。
それではまだ本格的に影響が出る前ではありますが、6ー8月決算の好不調企業を見ていきましょう。
図表 TOPIXと小売業指数の推移
まずは靴専門チェーン国内最大手のABCマート(2670)です。6ー8月期の売上高は前年同期比14%増の670億円、営業利益は57%増の94億円と非常に好調でした。同社は決算発表と合わせて今期の業績予想を上方修正しており、好調な決算を受け株価も堅調に推移しています。同社は好決算の理由を「国内外経済のコロナ禍からの立ち直りが想定より早く進んでいる」と説明しています。
続いてドトールコーヒーやエクセルシオール、星乃珈琲などの喫茶店チェーンを展開するドトール・日レスホールディングス(3087)も非常に好調でした。売上高は16%増の316億円、営業利益は5億円の黒字と前年の5億円近い赤字からのV字回復を達成しています。こちらもコロナ禍からの正常化が進みオフィス街でのランチ需要などが回復してきたことが好調の要因のようです。
ユニクロやGUを展開するファーストリテイリング(9983)も安心の好決算でした。売上高は23%増の5360億円、営業利益は24%増の262億円でした。米国や欧州などの海外事業の好調が好決算につながったようです。
このように着実にコロナ禍からの復活を遂げている企業もあれば、残念ながらまだまだ回復途上の企業もあります。
例えば家電量販店大手のコジマ(7513)は売上高が3.4%減の701億円、営業利益は24%減の16億円となりました。白物家電やゲームの販売伸び悩みが響いているようです。コジマも含めた家電量販店は、コロナ禍で伸びたゲーム機や家電販売の反動も出ているとみられ、今後どのようにインバウンド需要を取り込めるかなどが業績回復の鍵になってきそうです。
必ずしも小売業だけに限りませんが、原材料費や人件費の上昇をどのように価格に転嫁しつつ顧客離れを引き起こさないか、また外国人観光客にどのように「爆買い」してもらうかが復活の鍵になりそうです。この年末また来年にかけて本格的な脱コロナ、経済正常化を期待したいですね。