はじめに
紛争や自然災害による被害、経済格差による貧困など、現代はさまざまな社会課題であふれています。国際社会は2015年、「誰一人取り残さない」をキーワードに、貧困、不平等・格差、気候変動などに取り組むために持続可能な開発目標(SDGs)を採択しました。日本においても貧困や気候変動問題などについて、関心が高まっています。
こうした社会課題の解決に向け、個人が取り組みをサポートする手段の一つとして寄付があります。この記事では寄付による効果や、得られるリターンとしての寄付金控除について、ふるさと納税の限度額への影響とあわせて解説します。
社会課題の解決をサポートできる寄付の魅力
社会課題に関心をもつきっかけは人それぞれですが、「虐待事件を報じるニュースを見て、自分にできることはないかと考えるようになった」「子どもが生まれたことをきっかけに、子どもの貧困問題に関心を持つようになった」といったケースが考えられます。
さまざまなきっかけで「社会課題の解決に向けて、何か行動を起こしたい」と考えたとしても、個人の力では限界があると感じる方や、「何とかしたい気持ちはあるけど、何から始めるべきかわからない」という方も多いでしょう。社会課題の解決に、個人ができる選択肢の中にボランティアや寄付があります。
ボランティアは、支援に直接携わることができるため、支援者や支援先の方と交流を持て、支援していることへの実感を抱きやすいのが魅力です。しかし、活動の日時や条件が制限されていて参加できなかったり、参加することで自分自身の時間や労力が必要となったりしてしまいます。
一方、寄付は自身が関心を寄せる社会問題の解決に取り組む団体に金銭を提供することで、その活動をサポートすることができます。ボランティアと比較すると、忙しい人でも取り組みやすく、継続的に行いやすいことも魅力と言えるでしょう。投資に例えると、ボランティアは個別銘柄、寄付は投資信託と考えるとイメージしやすいかもしれません。
寄付の「リターン」としての寄付金控除
寄付というと、「単にお金を出すだけ」と思われがちですが、そんなことはありません。例えば、災害や紛争などで影響を受けた方たちのサポートを行うことは、一人ひとりの力では困難が多いです。しかし、適切なノウハウと豊富なネットワークを持っている団体に寄付をすれば、個人の社会貢献への思いを的確な形で届けることができます。そして、活動レポートや報告書などを受け取ることで、寄付がどのように使われ、活動が適切に行われているかを知ることができます。つまり、寄付する側と寄付を受ける専門団体は、「パートナー」ともいえる関係なのです。
また、より実質的なリターンとして、寄付金控除を活用することができるという点もあげられます。寄付金控除とは、個人が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに、「特定寄付金」を支出した場合に受けることができる所得控除のことを指します。ちなみに、政治活動に関する寄付金、認定NPO法人等に対する寄付金、公益社団法人等に対する寄付金のうち一定のものについては、所得控除ではなく、税額控除を選択することもできます。
具体的な控除額は以下の2つの計算式によって求められます。2つの計算式による算出額のうち、低い方から2,000円を差し引いた金額を「寄付金控除額」として所得から控除することができるのです。
- その年に支出した特定寄付金の額の合計額
- その年の総所得金額等の40パーセント相当額