はじめに

紛争や自然災害による被害、経済格差による貧困など、現代はさまざまな社会課題であふれています。国際社会は2015年、「誰一人取り残さない」をキーワードに、貧困、不平等・格差、気候変動などに取り組むために持続可能な開発目標(SDGs)を採択しました。日本においても貧困や気候変動問題などについて、関心が高まっています。

こうした社会課題の解決に向け、個人が取り組みをサポートする手段の一つとして寄付があります。この記事では寄付による効果や、得られるリターンとしての寄付金控除について、ふるさと納税の限度額への影響とあわせて解説します。

寄付金控除はふるさと納税の限度額に影響するのか

多くの人にとって身近な寄付としてあげられるのはふるさと納税でしょう。ふるさと納税は「納税」という名前がついていますが、実態は「地方自治体への寄付」です。寄付先の地方自治体の特産品などを返礼品として受け取ることができるため、この制度を利用している人も多いでしょう。

ふるさと納税には、本人の所得や家族構成によって決まる「上限額」があり、ふるさと納税関連のサイトではシミュレーターが用意されていることも多くなっています。「上限額ギリギリまで利用しよう」と考える人も多いと思いますが、地方自治体以外に寄付を行い、寄付金控除の適用を受ける場合、ふるさと納税の上限額にも影響を及ぼすことがあるのでしょうか? 

結論から言うと、寄付金控除を受けても、ふるさと納税の限度額に影響することはありません。ふるさと納税は寄付金税制の一つではあるものの、ふるさと納税のみに適用される「特例控除」があります。上限額を決める上でポイントとなる、住民税の控除額である特例控除の計算において、寄付金控除が影響を及ぼすことはないためです。つまり、寄付金控除の対象となっている団体であれば、ふるさと納税の上限額への影響を気にすることなく、寄付をすることができるのです。

ただし、控除の対象となるのは以下の団体などに寄付を行う場合です。また、還付を受けるためには寄付先の団体からの領収書を添付して確定申告を行う必要があります。

  • 国や地方公共団体
  • 公益社団法人・公益財団法人
  • 国立大学法人及び公立大学法人
  • 社会福祉法人、更生保護法人
  • 認定特定公益信託
  • 認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)に対する寄付金のうち一定のもの
  • 政治活動に関する寄付金のうち一定のもの

寄付金控除とふるさと納税を併用した場合のモデルケース

それでは実際に、どの程度の税金が控除されるのか、いくつかのパターンをあげてみていきましょう。ただし、実際の税額は個々の事情によって変わるため、あくまで目安程度にお考えください。詳細は、管轄の税務署または税理士にご相談ください。

◆ケース1:30代年収500万・専業主婦(夫)・小学生の子ども1人の世帯

ウクライナ危機をきっかけに世界の食料問題に関心を持ち、関連団体へ月額2,500円(年間30,000円)の継続的な寄付を検討している。

ふるさと納税の上限額の目安:49,000円 
寄付しない場合の想定所得税額:100,500円
年間30,000円寄付した場合の想定所得税額:97,700円(控除額28,000円)
※社会保険料控除は72万円と想定

◆ケース2:40代年収600万・共働き・高校生と中学生の子ども1人ずつ世帯

子どもの虐待の予防や貧困をめぐる報道をきっかけに、問題解決の支援を行うため関連団体へ月額5,000円(年間60,000円)の継続的な寄付を検討している。

ふるさと納税の上限額の目安:69,000円
寄付しない場合の想定所得税額:166,500円
年間60,000円寄付した際の想定所得税額:160,700円(控除額58,000円)
※社会保険料控除は86万円と想定

◆ケース3:50代年収800万・専業主婦(夫)・大学生と高校生の子ども1人ずつの世帯

子どもの教育費支出がひと段落し、その分の支出を次世代の子どもたちの教育に役立てるため、関連団体へ月額10,000円(年間120,000円)の継続的な寄付を検討している。

ふるさと納税の上限額の目安:85,000円
寄付しない場合の想定所得税額:212,500円 
年間120,000円寄付した際の想定所得税額:200,700円(控除額118,000円)
※社会保険料控除は113万円と想定

このように、ふるさと納税と寄付金控除は併用することができ、返戻品に加えて、所得税額を抑えるというリターンを受け取ることができるのです。

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