はじめに

どんなひとが影響を受ける?

──インボイス制度の導入によって影響があるのはどんな方でしょうか?

小島:一番影響が大きいのは、個人事業主の方と多く取引されている企業さんだと思います。取引先の事業者さんがほぼ免税事業者ばかりだと、もし契約がそのままの場合には、税金は元請けがすべて負担しなければならないことになります。

かじがや:ライターさんなんかも影響を受けると思います。ライターさんによっては「インボイスに登録済みなので課税仕入れになりますよ」というのを売りにする方も出てくるかもしれません。これは法律云々という話ではなく、需要と供給の関係性に近いかもしれません。実際に払うギャラは同じなのに免税事業者さんの場合は税金分が上乗せになるので、シンプルにコストだけを考えるとそうならざるを得なくなってきます。

──たとえば漫画家さんやイラストレーターさんのような個人事業主が多いような業界が大きな影響を受けるということでしょうか。

かじがや:そもそも、課税事業者は2年前の売り上げが1000万円を超えている方です。そうすると1000万円以下の売り上げの方というのは法人よりも個人が圧倒的に多いと思います。

小島:私が相談を受けた中で一番辛そうだったのが出版社さんですね。本の執筆者さんは事業者さんだけに限らないので、すべての方に課税事業者になっていただくのはあり得ない話ですし、本の売り上げも予測しづらいため元請け側が苦労するような業態だなと思いました。

──たしかにSNS上では、漫画家さんやミュージシャンの方も声をあげていますね。

かじがや:無駄な経費を使うなということと同じだと思いますので、必然的に課税事業者と取引していきましょう、みたいな流れは考えられるかもしれませんね。

企業はインボイスの何に困っている?

──税理士の立場として、インボイスについての問い合わせについて、企業側からはどんな相談が多いのでしょうか?

小島:建設系の会社さんの場合、ひとつの案件に関して元請けから二次請け、三次請けという構造になってくるわけですが、二次請け以降の方ですと個人事業主という立場で現場に来て働かれるケースが多いようです。

そのため、元請けから直接仕事をもらっている会社さんはだいたい課税事業者になりますが、それ以外の方ですとどうしても売り上げが1000万円を超える方は多くないようなので、そういう方たちに課税事業者になってもらうのか、対応が難しいイメージがあります。

あと、最近よく相談されるのが雇用契約なのか委託契約なのかです。システム関係の企業さんですと委託契約をされているケースが多く、給料として考えれば700万円から800万円というのはそれなりの金額にはなりますが、1000万円以下の方は免税事業者となります。インボイスという目線で見たときに、委託契約の場合は個人事業者という扱いになるため、ここも問題が生じてくるような気がします。

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次回は、フリーランスなどの個人事業主が一番気になるポイント、「インボイスによって仕事は減るのか?」や「課税事業者になった場合はどうなるのか?」をテーマにお話を聞いていきます。

写真:Daisuke Ishizaka

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