はじめに

統計学の知識があると、ビジネスや投資など、さまざまなシーンで活用できますが、「統計学って、むずかしい」と感じている方も多いのではないでしょうか?

そこで、サイエンスライター・本丸諒 氏の著書『グラフとクイズで見えなかった世界が見えてくる すごい統計学』(飛鳥新社)より、一部を抜粋・編集して統計学の基本について解説します。


「平均値、中央値、最頻値」どれも正しい!

2019年6月、金融庁は夫65歳以上、妻60歳以上の場合、その後、夫婦が30年ずつ生きるとして、「年金以外に2000万円が不足する」と発表し、世の中を騒がせることになりました。

この「貯蓄」という意味では、よく話題になるデータがあります。それが下のグラフです(総務省統計局「家計調査」)。このグラフは、平均値や中央値、最頻値という、統計学にとって重要な「代表値」がいっせいに登場します。しかもありがたいことに、これら3つの違いやそれぞれの特徴まで教えてくれるので、統計学でも定番のグラフです。ですから、このグラフの読み方を知っておくだけで、自信をもてるようになります。

まず、おおざっぱに「グラフの形」を見てください。どうなっているでしょうか?

左から右へと「右肩下がり」 になっています。

左側は貯蓄の少ない世帯、右側は貯蓄の多い世帯ですから、貯蓄の少ない世帯が圧倒的に多い、とわかります。

幅が一定ではない「ヒストグラム」

ここで、貯蓄現在高の区分(ヨコ軸)に注意してください。横幅、同じではありませんよね?

はじめは幅が100万円単位で始まっていますが、1000万円を超えたところから、200万円単位の幅に変わります。このため、横幅が2倍になっています。

これが高さにも影響しています。1000万~1200万円は6.0%あり、900万~1000万円は2.7%なので2倍以上の高さになっていてもよいのに、高さはほとんど変わっていません。その理由は何か? 横幅が2倍あるからです。

つまり、このグラフは一見すると、棒グラフのように見えますが、棒グラフではなく、「柱状グラフ」とか「ヒストグラム」(histogram)と呼ばれているものです。統計学ではよく使われます。

棒グラフとヒストグラムの違いは何でしょうか。

棒グラフは、各項目が「ドイツ、フランス、日本……」のように連続性をもっていませんから、極端なことをいうと隣に何がきてもよいわけです。大きさを見るときは、タテ軸の「高さ」で比べます。

ヒストグラムのほうはどうでしょうか。隣同士は量的に連続しています(「100万円未満」の次は、「100万~200万円」のように)。ですから、項目同士の位置を入れ替えることはできません。それに連続性をもっていますので、グラフも隣同士をくっつけて表示します。これがヒストグラムの特徴です。

ヒストグラムは項目の横幅が違うため、 ヒストグラムは「面積」で大きさを比べる ところも違います。

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