はじめに
「7時間睡眠」が体を強くする
日本人のうち、睡眠に満足している人は3割しかいないそうです(フィリップス「世界睡眠調査」より)。実際、経済協力開発機構(OECD)の調査によると、OECDに加盟している33か国のうち、もっとも平均睡眠時間が短かったのは日本でした。
では睡眠不足にならないためには、何時間寝ればよいのでしょうか。
理想はおよそ7時間。アメリカの大規模な調査では、 睡眠時間7時間の人がもっとも長生きだという結果が出ています。
「自分はショートスリーパーだから、4、5時間でも問題ない」いう人もいますが、実は睡眠時間が短くても問題のない「本物のショートスリーパー」は、非常に少なく、人口の3%、あるいは1%とも言われています。5時間ほどの睡眠でも昼間、眠気を感じたり、体の調子が悪くなったりしないという人も、実は慢性的な睡眠不足に、体がなんとか適応しているだけという可能性が高いでしょう。
短時間の睡眠がなぜ問題かというと、そのひとつの原因は「レム睡眠」の不足と言われています。
人間の睡眠状態には2つの種類があり、比較的、脳は活動的に動いている「レム睡眠」と脳の活動も低下した「ノンレム睡眠」があります。睡眠中は、この2つの眠りが交互に起こるのですが、通常、最初の3時間はノンレム睡眠の時間が長く、その後、徐々に眠りが浅くなってレム睡眠の時間が長くなります。そのため、短時間で起きてしまうとレム睡眠の時間が少なくなってしまうのです。
脳も休んでいるノンレム睡眠のほうが重要のように思われがちですが、レム睡眠も体や脳の機能に重要な役割があるのですね。
アメリカ・スタンフォード大学の研究では、 レム睡眠の割合が5%減少するごとに、死亡のリスクは13%上昇する という結果が出ています。
質のよい睡眠を得るためにも、1日7時間の睡眠を確保するようにしましょう。
毎日15~20分の「パワーナップ」で脳をリセット
スペインやイタリアの人たちは、長いお昼休みのあいだに時間をかけて昼食をとるだけでなく、ゆっくりお昼寝をすることも多いのだとか。スペインではこのお昼寝休憩のことを「シエスタ」と言います。
シエスタほど長くなくても、15分ほどの仮眠で十分効果があります。これを「パワーナップ」と言います(ナップとは昼寝のこと)。入眠すぐのノンレム睡眠により、軽い昼寝をすると脳がクリアになるとされているのです。
昼食後、眠気が襲ってきてつらい時間帯はだれにでもありますよね。そういうときは、「精力的に活動するためだ!」と考え、戦略的昼寝をしてしまいましょう。
NASA(アメリカ航空宇宙局)の研究では、昼に26分の仮眠をとった場合、認知能力が34%、注意力が54%上昇したということです。昼寝には、脳の疲れをとってその機能を回復させる効果があると考えられます。
また、別の研究では 昼寝の習慣がアルツハイマー型認知症や心臓病のリスクを軽減させる という報告もあります。こういった昼寝の効果は広く認められるようになっていて、グーグルやナイキ、アップルといった世界的な企業も、仮眠スペースや昼寝用の睡眠マシンを設置するなど、仮眠を推奨しています。
ただし、あまりに長時間昼寝をしてしまうと、かえって起きられず余計にぼーっとするうえ、夜の睡眠にも悪影響を及ぼします。夕方以降の昼寝も同様です。
昼寝は15~20分、少なくとも30分以内にして、15時までに済ませるようにしましょう。 すっきり目覚めたいなら、昼寝前に1杯のコーヒーでカフェインを摂取しておくといいでしょう。
また、横になると、深く寝入ってしまうこともあるので、いすに座った状態での昼寝がおすすめ。背もたれによりかかったり、机に頭をのせたり、できるだけ楽な姿勢で眠るとよいでしょう。あまり明るいと眠れないので、アイマスクを利用するのもおすすめです。