はじめに
【問題点】まちのお金が足りません!
住民の生活様式やニーズの多様化が進み、自治体が保有する資産が徐々に増えてきました。これらの資産を維持・管理するためにはかなりの資金が必要ですが、日々の報道が伝えるとおり、現在、自治体の財政難が大きな問題となっています。
自治体の財政運営は、1980年代(昭和55年以降)から、いわゆるバブル経済のピークを迎えるころまでは比較的安定していました。ところが、1990年代以降の長引く景気低迷の影響を受け、徐々に疲弊してきています。
自治体は、国が実施する政策を追従するかたちで、その対応策(景気対策)としての公共事業(道路工事など)を毎年追加しています。これにより、近年、非常に厳しい財政運営が続いているのです。
これまで公共事業の多くは、地方債の発行により、資金を調達してきました。バブル経済崩壊(1992年)以降、地方債の増発が顕著となっています。地方債残高を見ると、バブル経済崩壊直後では全国で70兆円未満であったものが、現在では146兆円と、倍に達しています。
このような財政難の中でも、自治体は、住民生活の安心・安全のためにさまざまな資産を今後も適切に管理していかなければなりません。そんな中、新しい考え方が注目されるようになりました。「新しい公共(新たな公)」という考え方です。次に、この「新しい公共」について説明します。
【解決策】「新しい公共」では住民や企業、NPOが主役
新しい公共とは、「公共心を持って、社会で必要とされるサービスを提供する活動や活動主体」を指します。
これは、平成20年代の初頭に国(内閣府)から発信された声明です。そこには、行政だけでは公共サービスに限界があるため、住民、企業やNPOなどの団体が公共サービスの受け手にとどまるのではなく、活動主体となり、それぞれができる役割を担い、まちづくりの主役になってほしいという期待が込められています。同時に、活動に参加する人々が、住民のために役立っているという充実感、満足感を得ることも目指しています。
これまでも、民間のさまざまな活動主体が、地域の清掃や独居老人の見守りなどのあらゆる分野において、公共的な仕事を担ってきました。国や自治体がやっていることだけを「公共」と呼ぶのではなく、「新しい公共」というものを創造していくことを国も推奨しているのです。
ここで、新しい公共の活動領域について具体的に述べます。
(1)行政機能の代替
本来、行政が担うべきサービスを、新しい公共が自らの意思で住民に提供する活動です。
・道路や公園の維持管理(掃除や除草など)を住民の手で行う
・公民館などの施設を住民が自主的に維持・管理する活動を行う
・リタイアした土木技術者グループが橋梁などの老朽化について検査を行う
・街の景観デザインを住民と行政が行う
・独居老人の情報把握や日常の世話をする