はじめに

(2)公共領域の補完

行政が担うべきとまではいえないが、公共的価値の高いサービスを提供する活動です。公共領域の補完の事例は数多くあります。

・伝統文化を保存する
・古民家や街並みを復元する
・ゴミの分別を行う
・地産地消を推進する
・自然環境や景観を保存する
・子どもを地域で育てる
・地域の特産品を発掘し、販売を行う
・地域の祭りを行う

(3)民間領域での公共性の発揮

必ずしも行政本来の役割ということではありませんが、公共的価値の高いものです。軌道に乗ると、ビジネスとして成り立つ可能性があります。

・住民が連携して地域の特産品を発掘し、コミュニティビジネスとして展開する
・古民家を観光資源として活用する
・空き家を二地域居住などのために活用する

新しい公共によって取り組まれる内容はさまざまですが、その中で共通しているのは、活動の成果は直接サービスを受ける人だけが得るのではなく、広く地域全体で享受する点です。新しい公共を創造することで、人々のニーズを満たす公共サービスを維持できる可能性が出てくるのです。

近年、総合計画の中に、住民の参加と協働による新しい公共を盛り込み、まちの将来の在り方を提示する自治体が出てきました。

例えば、富山県黒部市では、住民一人ひとりが主役として自主的かつ積極的にまちづくりに参加することを基本に、第1次黒部市総合振興計画を策定しました。将来、都市像を達成するための基本理念として、「市民の参画と協働によるまちづくり」を掲げています。

また、筆者が行革委員を拝命している三重県桑名市では、総合計画の主旨を「みんなでビジョンを共有し、全員参加型の市政」を実現することとしました。桑名市が目指す市の姿を明確にし、その実現に向け、各主体(住民、企業・団体、行政)が共通の目標に向かってまちづくりを行っていけるよう「市が取り組むこと」と「市民が行動すること」を記載し、「中央集権型の市政」ではなく、「全員参加型の市政」を目指す計画としました。

日本社会では、新しい公共が担うと想定される前述のサービスの多くは、古くから住民同士のつながりによって、生活の一部として日常的に提供されていました。都市や地方を問わず、集落の「結(ゆい)」や「寄り合い」などの集まりは、地域での道や水路、そして森林の維持管理などの協働作業を可能にし、住民の生活を自分たちで支えてきたのです。

地域におけるコミュニティ(共同体)の崩壊が進み、住民同士のつながりが薄れている現在、新しい公共に大きな期待がかかっているといえます。

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