はじめに
10月に1990年以来約32年ぶりに1米ドル=151円まで米ドル高・円安となりましたが、11月以降は一時140円を大きく割り込むほど米ドル安・円高に戻しました。歴史的円安は、あの151円で終わったのでしょうか?
為替相場の継続的な動きを「トレンド」と呼びますが、円安から円高へのトレンド転換も、後から振り返ったら「あの時が転換点だった」といった具合に、基本的には事後的にしか分かりません。
ただそんな転換点の見極めは、なるべく早い方がよいでしょう。
そこで、今回はトレンド転換の見極め方について考えて見たいと思います。
主観を諫めるために客観的判断が必要
米ドル高・円安は、2022年に記録的なペースで展開しました。このため、米ドル買い・円売りは、2022年に最も利益が出た取引の一つとも見られています。ところが、そんな米ドル/円は11月以降大きく米ドル安・円高に戻すところとなりました(図表1参照)。
【図表1】米ドル/円の週足チャート(2022年1月~)
これは、米ドル高・円安トレンドが続く中での、あくまで一時的な米ドル安・円高に過ぎないのか、それともついに歴史的米ドル高・円安は終わり、新たな米ドル安・円高トレンドが始まっているのか、ということへの関心はとても高いでしょう。
では、トレンド転換をどう見極めたらよいかというと、非常に難しい面があります。というのも、トレンド転換は事後的、結果的にしか判断できないからです。このため、しばらくはどうしても自分の立場で都合良く考えがちになります。
例えば、2022年に最も利益が出たとされる米ドル買い・円売り取引をまだ続けている立場の投資家からすると、「日銀の金融緩和が変わらない中での円高はやはり一時的に過ぎないのではないか」とか、「そもそもこの米ドル高は、インフレ対策の米利上げに連れた動きだったわけだから、米利上げが終わらないうちに米ドル高が終わるということはないだろう」と考えてしまうのも当然でしょう。
気をつけなければいけないのは、そういった判断は自分が米ドル買い・円売り取引を行っており、なるべくその利益を大きくしたい、損を出したくないといった主観の影響が大きくなっている可能性があるということでしょう。「こうなって欲しい」ということが事実とは限りません。そこで、投資における判断で重要なのは、主観を諫めるために、客観的に判断できるようにすることです。
では具体的にどのような客観的判断を行うかと言えば、例えば過去の円安から円高へのトレンド転換においてはどのような特徴があったかを確認した上で、それを参考にするという考え方です。その代表例が、チャート分析による判断でしょう。