はじめに
【問題点2】公共施設の著しい老朽化をどうする?
新しい会計制度の導入によって見つかった問題はいくつかありますが、最も大きなものは、公共施設(建物、道路など)の著しい老朽化です。これは日本のほとんどの自治体に該当する問題です。これまでまちの公共施設については、何となく古いのではないかと住民や職員など、多くの人が薄々感じていましたが、今回の新公会計制度での財務書類作成により、数字で明らかになりました。
あくまでも会計上の「耐用年数」による試算ですが、公共施設の老朽化比率がかなり高い自治体もあり、極めて深刻な状況となっています。ここでの耐用年数とは、建物や道路などの固定資産が使用できる期間として、法律により定められた年数のことです。国が「資産の価値は、これくらいの期間でなくなる」と定めた期間を指します。
よく似た言葉に「耐久年数」というものがありますが、これは、生産者などが独自の判断で「これくらいの期間は、問題なく使用できる」と公表しているものです。
さらに悪いことに、高度成長期には勢いで、バブル崩壊後には景気対策として、ほぼ同時期に建設された公共施設が一斉に老朽化し、更新時期(建て替え、工事の時期)が重なっています。
耐用年数が過ぎた資産について、全く同じものをつくるといくらかかるかを算出したのが将来更新必要額です。これによると、ほとんどの自治体で、現存する公共施設を今後も全て保有していくことは、財政的に困難であるということも明らかになりました。
また、財政的なことではありませんが、耐用年数を過ぎた建物などは、土木建築工学的な面からみた安全性が心配されます。
【解決策】新地方公会計制度を活用して公共施設の整備は計画的に
公共施設の老朽化に関して自治体では、「このままではいけない」という危機感をもち、「何とかしよう、変えていこう」という想いで試行錯誤しています。このような状況をみて総務省は、自治体に対して『公共施設等総合管理計画』および『個別施設計画』を策定することを要請しました。
多くの自治体はこれまで、公共施設の整備については、主に「古くなったら建て替える」「壊れたら直す」ということを繰り返してきており、計画的な対策ができていませんでした。
『公共施設等総合管理計画』および『個別施設計画』の策定により、一定の時期に整備工事が集中し、そのときに使うお金が膨大なものにならないように数年にわたって平準化(毎年同じくらいの金額を出していく)することが期待できます。
まちで新地方公会計制度がしっかりと整備され、信頼のおける財務書類が作成されなければ、財政状態や運営状況を正確に把握することはできません。今後、さらに増大する住民ニーズに応えるために、さまざまな政策・施策課題や制度改革への対応が必要となりますが、そのためにも新地方公会計制度が業務としてしっかり定着することが重要です。