はじめに
【問題その1】財政全体が見えない
収支(赤字なのか、黒字なのか)がはっきりわかりません。また、資産や負債の状況がわからず、現在どうなっており、将来どうなるのか、財政全体を正確に把握することができません。
また、借金(地方債)も収入(歳入)としています。つまりお金がいくら足りなくなっても借金さえできれば、まちの決算は赤字にならないという奇妙なことが生じています。これでは有効な財政計画を策定し、適切な財政運営をしていくことは不可能です。
【問題その2】コスト情報に不備がある
しばしば、「役所にはコスト意識がない」といわれますが、単式簿記・現金主義会計では、現金のみを対象としていますので、「費用」という意識がほとんどありません。コスト意識が弱いために地方債の乱発や自主的にお金(財源)を集めるという意識にゆるみが生じているといえます。
【問題その3】将来予測ができない
財政の将来予測計算の仕組みがありません。従って、将来を予測し、計画的に財政を運営していく上でそれが大きな問題となっています。
単式簿記・現金主義では、財政運営をしていく上で必要となる数字をすべて把握することはできません。今や見せたくないもの(例えば、負債総額など)を見せないですむような時代ではありません。複式簿記・発生主義会計は体系的な仕組みになっており、見せたくないものも見えてしまうという特長があります。資金繰り会計である単式簿記・現金主義会計では、一時しのぎができますが、複式簿記・発生主義会計では、どこかで必ず発覚します。
世界中のほとんどの国が官公庁においても複式簿記・発生主義会計を採用しています。公会計改革を積極的に推進した石原慎太郎・元東京都知事に言わせると「単式簿記・現金主義会計を採用しているのは、日本と北朝鮮くらいだろう」とのことです。
自治体が財務書類を作成して公表することにより信用を得ることができれば、民間銀行に借りている地方債を借り換えられる可能性があります。
事実、岐阜県各務原市では、財務書類を積極的に公開し、地方債の借り換えに成功し、かなりの金額の利子支払い分を減額できました。ちなみに、このときの入札で競われたのは、利子の利率でした。