はじめに

年金から税金・社会保険料が天引きされる(天引きの割合は10~15%ほど)

年金は、税金(所得税と住民税)や社会保険料(国民健康保険料、75歳以上は後期高齢者医療保険料と介護保険料)が天引きされて振り込まれます。仮に、東京都文京区在住、65歳以上の独身、扶養親族なしで年金が年240万円(年金以外の収入なし)の人の手取り額を計算すると、次のようになります。

著書「マンガと図解 定年前後のお金の教科書」(宝島社)より

所得税は年2万9600円(75歳以上は3万円)、住民税は年6万9200円(75歳以上は7万円)、国民健康保険料は年13万7428円(75歳からは後期高齢者医療保険料で12万8963円)、介護保険料は年9万300円となり、合計は32万6528円(75歳から31万9263円)です。つまり、このケースではおよそ14%天引きされる計算になります。

同条件で、額面が年500万円だと天引きの割合は18%、年100万円だと9%です。ただし、税金・社会保険料は、所得、年齢、家族構成、居住地によって変わるため、正確な金額は年金事務所や年金相談センターで確認しましょう。

繰り上げ・繰り下げ受給のデメリットを把握する

通常、年金は65歳から受給が開始されますが、希望すれば60~75歳の間の好きなタイミングで受給できます。60~64歳までに受給することを「繰り上げ受給」、66~75歳までに受給することを「繰り下げ受給」と呼びます。また、受給開始の時期は1カ月単位で選択できます。繰り上げ受給は年金を早く受け取れるメリットがありますが、1カ月早めるごとに0.4%ずつ受給率が減少します。仮に60歳から受給すると、受給率は76%(24%減額)になり、減額された年金は生涯続きます。

一方で、繰り下げ受給を行うと受給開始時期は遅れますが、1カ月繰り下げるごとに0.7%ずつ受給率が増えていきます。75歳まで遅らせると、受給率は184%(84%増額)となります。

繰り上げ・繰り下げ受給にはそれぞれデメリットはあります。

【繰り上げ受給のデメリット】
(1)年金額の減額が生涯続き、取り消せない

(2)繰り上げ受給は国民年金・厚生年金同時
→繰り下げ受給は国民年金だけ、厚生年金だけを選ぶことができます。

(3)国民年金の任意加入ができなくなる
→国民年金保険料の追納も同様にできなくなります。国民年金保険料が1年間未納だと、受け取れる年金額が年約2万円減ります。

(4)障害基礎年金が受け取れなくなる
→繰り上げ受給をすると「65歳に達した」とみなされ、障害基礎年金の対象者(65歳未満)でなくなります。障害基礎年金の金額は2級の場合老齢基礎年金と同額。1級の場合は2級の1.25倍、約100万円が非課税で受け取れます。

(5)寡婦年金が受け取れなくなる
→寡婦年金とは、10年以上保険料を払った第1号被保険者(自営業者など)の夫が老齢年金をもらう前に亡くなったときに、一定の条件を満たすことで妻がもらえる年金です。

【年金の繰り下げ受給のデメリット】
(1)長生きできないと損になる
→75歳まで繰り下げても元を取れるのは約12年後(額面ベース)のため、長生きしないと総額ベースで損をします

(2)税金や社会保険料も増える
75歳まで繰り下げると年金額は84%増えますが、この金額はあくまで「額面」ベースです。上述の通り、年金額が増えれば、税金や社会保険料などが増えるため、「手取り」は同じ金額だけ増えるわけではありません。

(3)繰り下げの対象外の年金がある
加給年金、振替加算、特別支給の老齢厚生年金といった年金は、繰り下げをしても金額が増えません。加給年金は、65歳未満の配偶者や18歳の年度末を迎えるまでの子を扶養しているときに支給される年金です。加給年金の対象になっていた配偶者が65歳になり、自分の年金を受け取れるようになると、加給年金は打ち切られます。しかし、その代わりに妻の老齢基礎年金に振替加算がつくようになります(1966年4月2日生まれ以降の方は受給不可)。

(4)遺族年金は65歳時点の金額で計算
繰り下げ中に亡くなった場合、条件を満たすと遺族が遺族年金を受け取れます。しかし、遺族年金の金額は、65歳時点の金額を基準として計算されます。遺族は繰り下げのメリットを受けられません。

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