はじめに

繰り上げ・繰り下げ受給の損益分岐点は「手取り」が考えるのが大切

一度繰り上げ・繰り下げを選択するとその受給率は生涯続きます。そのため、何歳まで生きるかによって、損するのか、得するのかが変わります。例えば、70歳まで繰り下げ受給した場合、81歳11カ月以上生きれば、65歳で受給するよりもお得になります(額面ベース)。この例では、81歳11カ月が損得を分ける損益分岐点となります。

著書「マンガと図解 定年前後のお金の教科書」(宝島社)より

ただし、年金受給の際には、税金・社会保険料が天引きされます。上記の条件で計算すると、手取り額ベースの損益分岐点は84歳1カ月になります。つまり、年金の手取りベースの損益分岐点は、額面ベースの損益分岐点に2歳程度プラスした年齢となります。より正しく損益分岐点を把握するには、手取り額ベースで考えることが大切です。

年金は何歳で受け取るのが良いか、指針を考えてみました。まず、誰もが自分自身の寿命をわかりません。都合よく、自分の想定した寿命になることは難しいでしょう。日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳(厚生労働省「簡易生命表」(2021年))。さらに、男性の半数は85歳、女性の半数は90歳まで生きる時代です。平均寿命は今後も伸び続けることを考えれば、年金は繰り上げ受給せず、繰り下げ受給するのがいいでしょう。この点は、額面ベースだろうと、手取りベースだろうと考え方は同じです。

年金の繰り下げ受給でひとつの目安となるのは、68歳です。寿命が84歳〜86歳のときに、手取りの年金額がもっとも多くなります。ただし、68歳を過ぎても長く働けるなら、働いている間は繰り下げ待機をしておいて、仕事を辞めた年齢から年金受取を開始するのもひとつの手です。

また、繰り下げ待機中に体調を崩したなど、不測の事態が起こることも考えられます。まとまったお金が必要になった場合、それまで受け取ってこなかった年金を最大5年分さかのぼって一括で受給できます。

マンガと図解 定年前後のお金の教科書

著者:頼藤太希/高山一恵
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