はじめに

掛け金の傾向

いろいろな年末調整の資料を拝見していると、新旧とも「一般」の区分に多額の保険をかけている方が多いようです。何度も保険を見直して追加の契約をしているのに、「一般」の枠にばかりかけてしまいがちなのです。

「一般」の枠は、死亡保険や学資保険、外貨の積立商品など「介護医療」と「個人年金」に含まれないもの全てが該当するため、どうしてもこちらに偏りがちのようです。「介護医療」は入院医療保険やがん保険などが該当し、「個人年金」は65歳以降などの老後に受け取るために積み立てておくタイプの商品です。

現在の低金利では「個人年金保険」商品にかけるのはリターンが低すぎるため、この商品を選ばれる方は大変少ないようです。少し前の金利がもう少し良い時代は、年金型の商品も投資のような要素がある上に、税額の控除が増えるという点でメリットがあり掛ける方も多かったのですが、これから加入する場合は節税分のメリットのみともいえる商品がほとんどなので、契約時には必ず将来の返礼率をチェックして、そのメリットを慎重に見極めて判断すべきといえます。

かけておくと特に有効なケースは所得税の税率が高い方です。さまざまな控除を使って節税したが、まだまだ所得税の税率が高い、という方は節税効果が大きいので余力があれば、追加で加入するという方法も有効です。

例えば課税所得(税金がかかる所得金額)が900万円を超える方は、所得税と住民税を合わせて43%の節税効果があります。

一方、介護医療型の保険は、要介護状態になった場合や、入院などの医療が必要な時などその契約内容に応じて、万一の際に給付金が支給されるものです。「介護保険」「医療保険」「がん保険」などの種類をひとまとめにして「介護医療」という区分になっています。

昔にかけた医療保険のままなら、一般の区分に織り込まれているケースもあり、保証される医療内容が今の時代に合っていないこともあるので、もし医療や介護について万一の保障を受けたいという場合は、見直しや加入も検討されてはいかがでしょうか。これまでかけていなかった方の節税効果は上記の個人年金と同額になります。

実際の控除額

新旧とも、実際の控除額は限度額を超えている場合はそれぞれ支払額の半分です。しかし、限度額に満たない場合は一定の計算式に当てはめて控除金額を計算することになります。国税庁「No.1140 生命保険料控除」より、計算式は次の通りです。

今後契約する場合は新制度の保険商品になります。個人年金型の保険商品は、年間10万円を超えるものがほとんどですが、介護医療保険については毎月の掛金が小さいものもあります。年間2万円以下の部分が節税効果が大きいことを考えると、介護医療の商品なら少額で節税を狙うというのも良いでしょう。

iDeCoとの兼ね合い

個人年金型の保険商品とiDeCo(確定拠出年金)はどちらも60歳以降、つまり老後のための年金として積み立てておく商品という点では、同様の意味を持っています。しかし、掛け金をかける際の節税効果や、受け取りの際の課税について違いがあります。

iDeCoは掛金の全額が所得控除の対象になりますので、例えば年間12万円を拠出した場合はそのまま12万円が所得控除金額となり、掛ける税率分の節税効果があります。

一方、個人年金型保険商品は、8万円かければ4万円の控除なので、控除が半減してしまい節税効果も同様に減ってしまいます。つまり、iDeCoと個人年金型の保険商品のいずれもまだという場合に節税したいという方は、iDeCoを優先したほうが節税という観点では有利に働きます。

また、iDeCoは運用益にも税金がかからないのでお得です。個人年金型の保険は、商品によって一時所得や年金所得という所得に該当して、一部に税金がかかってしまうことがあります。少額なら税金がかからないことも多いので、契約時には受け取り時の税金の取り扱いについても確認しておきましょう。


生命保険料控除は、なんとなく年末調整のハガキをつけて出しているだけ、という方も、計算の仕方を改めて知ると、見えてくる対策もあったのではないでしょうか?

正しい知識があれば、少しずつでも節税を積み上げていくことができ、それが将来の大きな財産となります。これを機に、自分や家族の保険料がどうなっているのか確認して、源泉徴収票に書かれた税額が減る可能性がないか、チェックしてみてください。

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