はじめに

ボラティリティが一変する可能性がある2023年

これまで見てきたことからすると、2023年の米ドル/円の行方は、米金融政策の見通しが大前提になりそうです。そんな米国の金融政策は、2023年に入ってもまだ利上げが続き、FFレートは5%以上に引き上げられるとの見通しが基本でしょう。

その上で、インフレの動向及び米景気の減速具合を見ながら利下げへの転換に向かうものの、今のところは最も金利を下げると予想している人でも、2023年末にFFレートはせいぜい4%まで引き下げられるかどうかといった見通しのようです(図表4参照)。

そんなFFレートを参考に米2年債利回りは推移し、2022年はその米2年債利回りと米ドル/円は、一時期を除くとほぼ重なって推移してきたわけです。このため、FFレートの2023年中の見通しを参考に、米2年債利回りと米ドル/円の見通しをイメージしたのが図表5になります。具体的には、2023年の米ドル/円は、135~145円中心での推移といった見通しになります。

これを聞いて、「えっ!?」と感じた人は多いのではないでしょうか。2022年に最大で40円近くも変動した米ドル/円だったのに、2023年はたったの10円程度の変動幅になってしまうなんて想像しにくいと思います。

さすがに私も最大変動幅が、一気に10円程度まで縮小するとも思いませんが、例えば130~150円といった具合に20円程度に縮小する可能性はありえると思います。というのも、2022年の米ドル/円は、これまで見てきたように、記録的な米国の大幅利上げの影響を受けて大きく動いたわけですが、そんな米国の金融政策の変動率は、2023年は大きく低下すると予想されます。それが米ドル/円に影響するなら、米ドル/円の値動きも、2022年から一転して小さくなる可能性は当然あるでしょう。

ちなみに、大きく動いた年の翌年は小動きになるというのは、過去の経験からも確認されるところです。1990年以降で、2022年と同じように年間値幅が30円以上に拡大したのは1990年と1998年。そして25円以上の値幅になると、1993年と1995年が追加されます。以上の4回は全て、翌年の値幅が3~5割も縮小していました(図表6参照)。仮に、米ドル/円の値幅が2022年から3~5割も縮小するなら、2023年の値幅は20~30円程度に縮小する見通しになるわけです。

今回は、2023年の米ドル/円の予想について考えてきました。まずは、これまでの米ドル/円の動きを説明できるものは何かを確認します。今回の場合は、米金利と米国の金融政策ということでした。そうであれば、そんな米金利と米金融政策が2023年にどんな見通しになるかを考え、それを前提に米ドル/円を予想するということになります。

そういった方法で考えた米ドル/円の2023年のシナリオは、とくに値動き(ボラティリティ)の面などが2022年から大きく変化する可能性がありました。そうであれば、投資戦略も頭の切り替えが必要になりそうです。

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