はじめに

2022年Q3:イーサリアムマージと大手金融機関参入

2022年Q3は、米国における金利上昇が一服したことで、暗号資産も株式とともに買いスタートとなりました。そのなかイーサリアムが大型アップデート「マージ(Merge)」への期待から大きく価格を伸ばしました。マージとは、コンピュータ計算に基づく検証アルゴリズム(Proof of Work)から、資産保有量に基づく検証アルゴリズム(Proof of Stake)へ移行することを指します。これによってイーサリアムの取引処理性能が向上し、取引遅延や手数料高騰などの問題が改善されるとされています。

また、イーサリアムはマージ後、タイミングによってはデフレ資産になるといわれています。イーサリアムはマージによってPoW分の新規発行がなくなり、発行ペースが大幅に抑えられました。一方で、イーサリアムには取引手数料の一部をバーンする(流通量から減らす)仕組みがあります。そのため、イーサリアムの利用が増えるほど、新規発行量に対してバーン量の方が上回り、市場流通量が次第に減少することになります。こうした期待もあってイーサリアムはビットコイン建てでも上昇しました。

この期間には大手金融機関による暗号資産市場への参入も目立ちました。世界最大の資産運用会社ブラックロックは顧客向けにビットコイン投資信託の提供を開始し、BNPパリバやバークレイズ、ナスダックらは暗号資産カストディ事業に参入することを発表しました。

イーサリアムの大型アップデート「マージ」によって何が変わるか。そして、その先に目指すものとは

2022年Q4:FTXショック

2022年Q4は、米国金利が再び上昇するなか、暗号資産は軟調な株式とは別に底堅い推移を続けていました。この期間にもバイナンス関連のブリッジサービスでハッキング被害が起こりましたが、相場への影響は限定的となりました。しかし、FTXグループ関連のリーク記事が出たことによって事態は一変し、わずか10日間足らずで大手取引所グループの破綻騒動にまで発展しました。

FTXグループ破綻は現在までもその余波が続いています。FTXグループに出資していたセコイア・キャピタルやテマセクなどのファンドは評価額ゼロとして損失計上し、FTXグループと関わりの深いソラナ関連プロジェクトは揃って価値が暴落しました。また、FTXグループが救いの手を差し伸べていたブロックファイは破綻し、その他の暗号資産関連企業についても連鎖破綻の懸念が高まっています。

成功者と思われた「FTXグループ」はなぜ破綻したのか? 倒産の理由と金融市場への影響を解説

このように振り返ると2022年の暗号資産市場は総じてネガティブな出来事が多かったといえます。大規模なハッキングと経営破綻により、業界全体が抱えるさまざまな問題が明らかになりました。これを受けて各国における暗号資産規制が強化され、一旦は成長にブレーキがかかるかもしれません。しかし、暗号資産の技術も、それに対する企業の関心も失われておらず、暗号資産市場は規制環境が整うことでさらなる発展を遂げるでしょう。

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