はじめに

いまが政府の出番だが…

賃金が上がらない中で物価だけが上昇するのはよいことではありませんが、これまで長らく物価が上昇しないといわれてきた日本において、国民の多くが今よりも将来の方がモノの値段が上がっていくという認識に変わってきたことはよいことであると考えます。

将来モノの値段が上がると予想するのであれば、いま買った方がいいと考える人が増えるでしょう。そうなれば一時的に需要は高まります。しかし、消費の原資となる賃金が上昇しなければ、それは長続きしません。そこで、家計が節約をし、企業がコストカットに走ってしまう前に、政府がよいインフレスパイラルを生じさせられるように手を打つ出番が来たのです。具体的には財政政策ということになります。財政政策と聞くと、公共投資などで橋やダムをつくることをイメージするかもしれませんが、消費減税など税率を変更することも財政政策の1つです。

たとえば、よいインフレスパイラルが生じるまでは政府が消費減税をして家計の購買力を向上させ、企業の賃上げが浸透していくことを待つことも可能です。しかし、ここ最近の報道では増税の話ばかりが出ています。これでは将来の負担増を警戒し、家計の節約傾向が加速してしまいます。

カオスを活用した再建策

さて、2023年は物価上昇や円安の進行に歯止めがかかると書きましたが、それでは日本経済復活のカギは何なのでしょうか。コロナ禍やウクライナ戦争によって、世界経済が大きく変動しつつあり、一種のカオス状態になっているからこそ、私は日本にとってチャンスだと考えています。

たとえば、円安の進行に歯止めがかかるとはいえ、依然として円安の水準にはあるので、これを機に海外に出ていってしまった企業の生産拠点を国内回帰させること。これによって、国内の供給能力が高まるだけでなく、新たな雇用も発生します。しかし、その場合は高すぎる電気料金に手を打たなくてはいけません。そうなれば、日本が現時点で保有する発電能力をどのように活用するか、つまりは原発の再稼働なども含めて政府は議論を進めなければならないでしょう。

これまでは安価な労働力を目当てに世界中の多くの企業が中国に生産拠点を作ってきましたが、強硬的なゼロコロナ政策も含めて、チャイナリスクが一気に浮上してきました。この結果として、海外に出ていった日本企業の国内回帰だけでなく、中国にあった海外企業の生産拠点を日本に誘致することも考えられます。

世界経済が大きく揺れ動き、様々なところで再編が行なわれるカオス状態だからこそ、これまで世界経済における存在感を小さくし続けてきた日本が再び存在感を示すことのできるチャンスが訪れていると考えられるのではないでしょうか。

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