はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は深野康彦氏がお答えします。

質問が2つあります。ひとつは、20代の妻が投資に関して無関心、いや、むしろ、毛嫌いしていることです。資産は少しずつですが、確実に増えているのですが、妻は「いつどうなるかわからないことにお金を使うなんて。今、確実な現金があるんだから、そんなことしなくたっていいじゃない!」といった具合です。私が「老後のため」「余裕ある生活を送るため」などと必要性を説いたところで、まったく理解してくれません。わかってもらえるような方法はあるでしょうか?

もうひとつは、投資法の変更についてです。今まで株式投資を中心に行っていましたが、自身の年齢も考え、そろそろ不動産投資に切り替えようかと考えています。区分所有のマンションから始めようと思っています。資金として、現在の株式1,000万円をすべてを頭金にするのか。それとも株式を半分残して500万円程度の頭金にするのか。あるいは、ほかによい案があればアドバイスをお願いします。

また、現在は自宅マンションの住宅ローンも残っている状態です。不動産投資よりも、ローンの繰上返済に回した方がよいのでしょうか?
(40代前半 既婚・子供なし 男性)


深野 :まずは1番目の、奥様に投資を理解していただくにはどうするか、から回答させていただきましょう。

ご存知のように政府が脱デフレ政策をおこなっていることから、物価上昇率は緩やかとはいえ預金金利を上回っています。このため、物価の上昇率以上の収益を上げないと貨幣価値が目減りする、言い換えれば購買力が低下してしまうことをお伝えしてはいかがでしょう。

投資は物価の上昇に対応できる役割も持つ

具体的な例を挙げると、円安により輸入品の価格が上がっています。例えば、コーヒーなどは安倍政権によるアベノミクスが始まってから値上げされています。つまり、5年前と同金額では購入することはできないのです。

預金金利では到底コーヒーの値上げに対応できませんが、外貨預金をおこなっていれば、円安(外貨高)によってかなりの収益を確保することができたはずです。コーヒーの値上げ分をすべてカバーすることはできなくても、かなりの部分を外貨預金の収益でカバーすることができたことでしょう。

このように投資はお金を増やすだけではなく、物価の上昇等に対する保険という側面を持っているのです。

あるいは、株式投資、なかでも優待投資を行えば、定期的に優待品を受け取ることができることをお伝えしてはいかがでしょうか。

奥様が喜びそうなもの、家計を助けるようなものを受け取れる優待株、なるべく投資金額が少ない銘柄を1銘柄買い、実際に優待品を受け取れば奥様の気持ちに少しずつ変化が現れるのではないでしょうか。時間をかけて徐々に奥様の気持ちを変えるようにされてください。

不動産投資よりも住宅ローンの繰上げ返済を優先

2つ目の不動産投資についてですが、不動産価格が上昇傾向にあり、また全国的に賃貸物件の空室率が高まっている今、不動産投資で収益を上げるのはかなり難しくなっていると思われます。

不動産投資ではなく不動産業を営むくらいの気持ちでいないと成功はおぼつかないと考えてください。

FPとしては、不動産投資を考える前に、ご自宅の住宅ローンの繰上返済を優先されたほうがよいと思われます。

ご質問者の年齢は40代前半と記載されていますが、今でこそ景気は持ち直しているものの、超高齢化、多額の国の借金、人口減少など、わが国の置かれた状況を考慮すれば、景気が今後も拡張を続けていくとは考えにくいでしょう。

それこそ2020年の東京五輪終了後(場合によってはその前)には、景気はピークアウトする予測が多く、その予測が当たり、再び失われた10年、20年がやってこないとも限りません。

そうなれば、ご質問者の世代は真っ先にリストラの対象となることでしょう。リストラとならなくても収入の大幅減も考えられます。2008年のリーマンショック後には景気が急激に悪化し、世の中はリストラの嵐が蔓延したのです。

今はそんな不景気のことは考えたくないかもしれませんが、好調であるときこそ、次の悪い局面に備えるべきなのです。

住宅ローンの返済は待ってくれません。逆にいえば、住宅価格が低下して住宅ローンの残高の方が多くても、住宅ローンの返済が滞らない限りは、問題なく家に住み続けられるのです。

家計の財務内容を強化するために、不動産投資をおこなう前に繰上返済をおこなって債務を圧縮しておくべきだと思います。

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