はじめに
今年もいよいよ残り少なくなり、様々な金融機関から出される来年の相場見通しも出そろった感があります。ざっとまとめると、コンセンサスは以下のようなものでしょう。
・今年、猛威を振るったインフレはピークアウトの兆しがあるものの、まだ高い水準にとどまる。
・よって米連邦準備理事会(FRB)は引き締めを当面維持する。
・したがって米国景気は一段と減速の度合いを強め、リセッション(景気後退)入りが濃厚となる。
ここまではコンセンサスができているといってもいいでしょう。問題は、その後の見通しが分かれることです。
景気後退かインフレは続くか
景気後退入りを前提に、年後半、FRBが利下げに転じると見込む向きと、インフレが収まらないために利下げ転換は2024年以降になるだろうという見方の二派に分かれています。市場の金利から逆算すると年後半の利下げが見込まれています。金利のマーケットは前者だといえます。
しかし、後者の見方をするエコノミストも多くいます。
インフレが収まらないとする理由でいちばん多く指摘されるのが労働市場のひっ迫が続いている点です。米労働省が2日に発表した11月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から26万3000人増え、市場予想の20万人も上回る伸びとなりました。企業の求人件数はピークから減ったとはいえ高い水準で、一方、失業率は低い水準にとどまったままです。人手不足の解消にさらに時間がかかれば、賃金インフレが収まりません。事実、11月の雇用統計では民間部門の平均時給は32.8ドルで、前月から0.6%上昇しました。前年同月比では5.1%と高い伸びが続いています。この人手不足→賃金上昇→サービス価格全般へのインフレ圧力の高まり、という構図が続いていることがインフレ継続の根拠となっています。