はじめに
不整合が発生する7つの理由
手続きとしては、原則加入中のiDeCoの金融機関が窓口ですが、場合によっては日本年金機構(年金事務所)への届け出や、会社への連絡も必要になります。通知が発行された理由により手続き方法が異なりますので、注意が必要です。
(1)被保険者種別の相違
iDeCoで登録されている情報と、日本年金機構で登録されている情報が異なっているケースです。例えば、基礎年金番号の間違いや、被保険者種別の間違いです。被保険者種別には、第1号・第2号・第3号の他、第一号・第二号・第三号・第四号という種別があります。
- 第1号は、自営業や学生など国民年金のみに加入している方です。
- 第2号は、会社員と公務員ですが、さらに4つに分類されます。第一号が民間会社員、第二号が国家公務員、第三号が地方公務員、第四号が私立学校教職員です。
- 第3号は、第2号被保険者の扶養の配偶者です。
就職、転職、退職、結婚などにより、被保険者種別が変わった場合、日本年金機構での手続きも必要ですが、iDeCoの変更手続きも必要になります。この2つの手続きは自動で連動しないため、時差が生じて通知が発行されることもあります。
よくあるケースとしては、転職により会社が変わったけれど金融機関に届け出をしなかった、すぐに再就職すると思って年金手続きをしていなかった、などが挙げられます。普段、私たちは被保険者種別を気にすることがないので、より注意が必要です。
(2)国民年金保険料の免除を受けている
失業などにより国民年金保険料の免除あるいは猶予を受けている場合、iDeCoの拠出はできません。その間は加入資格を喪失しますので、金融機関で手続きを行います。
(3)年金記録が死亡となっている
iDeCoの加入者が亡くなると、その資産が全額遺族に払い出しされますので、やはり金融機関に届け出を出します。ちなみにiDeCoの遺族給付の受取人の指定も可能ですので、必要な場合は金融機関に申し出をします。
(4)生年月日の相違
うっかりミスではありますが、相違が発生すると生年月日を証明する書類を添付して、金融機関で手続きを行う必要があります。
(5)iDeCoの掛金が限度額を超えている
自営業の方などで、国民年金に上乗せで付加保険料月400円を納付している場合、iDeCoの掛金上限額は68,000円ではなく67,000円となります。これはiDeCoの掛金が1,000円刻みでしか変えられないからです。付加保険料の納付を止めるか、iDeCoの掛金額を調整するかにより手続きが異なります。
付加保険料は月400円納付すると、200円 × 納付月数分の年金を65歳から受け取れることから、「2年で元が取れる」と言われ人気もあります。とはいえ、40年間保険料を納付すると、96,000円の終身年金ですが、10年間の加入では24,000円の終身年金です。iDeCoの掛金1,000円削ってまで優先すべきことなのか、判断は分かれそうです。
類似のケースとしては、2022年10月以降、会社で企業型確定拠出年金に加入していてかつiDeCoに併用加入をしている方に「企業型確定拠出年金の掛金額変更によるiDeCo掛金一時停止のお知らせ」が発行されることがあります。
iDeCoの併用加入は、会社からの掛金とiDeCoの掛金の合計が55,000円を超えないことかつiDeCoの掛金は20,000円を超えないことを条件としています(DBなど他制度の加入がある場合、合計27,500円かつiDeCoの掛金は12,000円が上限となります)。仮に会社の掛金が変更になり、合算額が条件を超えるような場合は、iDeCoの掛金が減額されます。さらに会社の掛金によっては、iDeCoの拠出が停止されることもあります。
例えば、今まで会社の掛金が45,000円だったのでiDeCoで10,000円を拠出していた方が、会社の掛金が51,000円に変更されると、iDeCoの枠は4,000円となってしまいます。するとiDeCoの最低掛金は5,000円ですから、iDeCoの拠出が停止されます。
このように、他制度と併用することでiDeCoが調整されることがあります。せっかくのiDeCoが継続できなくなることもありますので、気をつけましょう。
(6)マッチング拠出を利用している
(7)年単位拠出を利用している
上記2つは、いずれも勤め先の企業型確定拠出年金のルールによるところなので、対応窓口は勤め先となります。会社の企業型確定拠出年金において、マッチング拠出を選んでいるとiDeCoの併用はできませんし、会社の掛金が年単位拠出の場合もiDeCoの併用加入が認められません。
いずれのケースも会社の制度が優先されますが、マッチング拠出をやめるとその記録が国民年金基金連合会に通知され、掛金拠出は自動で再開されます。また会社の掛金が年単位から月単位に変更されると、同様に掛金の拠出が自動で再開されます。
逆に、マッチング拠出を継続する、あるいは会社が年単位拠出を継続すると、iDeCoへの加入ができませんので、金融機関に「運用指図者」となる手続きを行います。運用指図者となった場合も月々の管理費用がかかるため、iDeCoの残高に見合わない場合はiDeCoの資産を会社の企業型確定拠出年金に移換することも可能です。この場合はまず金融機関に「資格喪失」の手続きを行った上で、移換の手続きを行います。
iDeCoの手続きはめんどくさい?
iDeCoは加入の際も、さまざまな手続きがあり、めんどくさいと感じられる方も多いです。また、今回ご紹介した通り、加入後も状況が変わる毎に手続きが必要で、これもまためんどくさいと感じる方も少なくありません。特に転職時は、なにかと忙しいので、さらにiDeCoの手続きまでも気が回らないというのも理解できます。
国としても、iDeCoの煩雑な手続きについては問題視しており、改善が試みられています。とはいえ、改善には時間がかかるものですから、しばらくはめんどくささと上手く付き合う必要があるでしょう。
iDeCoにかかわらず、総じてお金の管理や手続きが不得意という方は多いものです。できれば月に1回、おちついてお金と向き合う日を作ってみることをオススメします。月1回必ず記帳する、クレジットカードの明細を見てみる、iDeCoの残高をチェックする……などのルーチンを設けるのです。各種お知らせ等も、月に1回まとめて行えば、効率も上がります。同時に支出の予算化などをしていくと、無駄使いも防げます。
何事も継続が力となります。iDeCoも継続してこそ、有意義な制度となりますので、まずは月1回のお金と向き合うルーチン、始めてみてください。