はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。

世の中には「ファイナンシャルプランナー」という方がたくさんいらっしゃいますが、ごく一般の主婦でも家計をチェックしてもらうことができるのでしょうか? いくらかかるのかわからないため、まだ一度も専門家の方に相談したことはありません。どのようなアドバイスをいただけるのでしょうか? また、最初はセミナーに参加したほうがよいですか。それとも個人的に相談したほうがよいのでしょうか。
(30代後半 既婚 女性)


野瀬 :ファイナンシャルプランナー(以下FP)ですが、実は定義が少し複雑でややこしくなります。

日本で一般的にFPと呼ばれる人は3種類います。

(1)国家資格である『ファイナンシャル・プランナー技能士(1級~3級)』
(2)民間資格である『AFP』
(3)同じく民間資格である『CFP』

では、この3つがまったく関係ないのかといえば、お互いに互換性や科目の免除等があり、緩やかな一体として「FP」が構成されているイメージです。

そして、このFPの仕事ですが、基本的には個人からの依頼を受けて、専門家の見地から「お金」に関するアドバイスを行う仕事です。

一言で「お金」といっても、身近な家計管理から住宅ローン、複雑なものだと保険や最近は相続などについてもアドバイスを行っているようです。

FPに個人的な相談はできる?

もちろん個人的な相談も受けてもらえます。

たぶん一番多い相談は住宅ローンに関するものです。

「今の年収や家族構成で抱えてもよいローンの限界」「元利均等にしたほうがよいか、それとも元本均等にしたほうがよいか」「固定金利がよいか、変動金利がよいか」などです。

そのほか個人には複雑すぎてわからない保険商品について、家族構成・年齢などを考えて「どの保険がよいか」というアドバイスも行っています。

もちろん、もっと簡単な家計についても相談に応じてくれる方がほとんどです。

相談費用はいくら?

さて、ここで気になる「費用」の話ですが、実はこれが微妙な問題です。

費用に関する規定がないので、「タダ!」という人もいれば、「1時間○○万円」という売れっ子FPさんもいらっしゃいます。

もちろんタダがいいとなるのですが、世の中そんなうまい話はありません。FPも霞を食べて生きているのではありません。どこかからお金を得る必要があるのです。

実は世の中のFPさんは、銀行や証券会社、保険会社と提携関係を結んでいるケースが多いのです。

そしてその結果、提携先のローンや保険商品を勧めることで成功報酬として、それらの会社からコミッションを貰っているのです。

「え!? そんなことで公平なアドバイスができるの?」と思うかもしれませんが、これは純然たる事実です。

すべてのFPから公正なアドバイスが得られるとは限らない

FPを名乗る人は日本に10万人以上いるのですが、実は法律によって守られている「独占業務」というものがありません。別にFPでなくても「お金」に関するアドバイスを行うことはできるのです。

すると、どうなるか。FPの資格を取ったものの、その資格だけでは食べていけない人がたくさん出てくるわけです。

そのため致し方なく、銀行や保険会社と提携して、実質それらの「営業代行」として活動している人が少なくないのです。

当然、FPの倫理規定に「顧客の利益」を一番優先するという旨の規定はあるのですが、FPにも生活があります。「お金のプロ」であるFPが収入に困るというのも皮肉なのですが、このような構造を考えると100%公正なアドバイスが得られるとは私は考えていません。

もちろん、私がお会いしたFPの中には非常に優秀で公平な方もたくさんいらっしゃいます。

ただ、そういう方は「1時間○○円」というかたちで相談料を取っている方がほとんどでした。そうすることで、銀行や保険会社からコミッションを受け取らずに公平な判断ができるようになるのです。

繰り返しますが、FPも霞を食べているわけではないのです。あまり高い相談料を払うのはいかがかと思いますが、総額数千万円になる住宅ローンや生命保険に加入する場合には、数千円から1万円程度の相談をしてみるのもいいと思います。

前職から得意分野を見極める、賢いFPの利用法

先ほど述べたような家計や住宅ローン、保険商品に関するアドバイスがメインです。これらは支払総額数千万円にもなる大型契約なのに、月々の支払がそれほど大きくないため「ポン」と独断で決めてしまう人が多いのが現状です。

こういった大きな支出について、事前にFPにアドバイスをもらうのは賢いFPの使い方のひとつです。節約規模も大きいですからね。

また人によっては債務整理や相続についてもアドバイスを行っている人がいます。ただ、これらは人によって得意・不得意がありますので、その人の得意分野をしっかり見極めてうえで選ぶとよいでしょう。

肝心の「探し方」ですが、ひとつの方法が「前職」です。証券会社出身の方なら株式や投資信託に詳しいでしょうし、金融機関出身なら住宅ローンや債務整理、保険会社出身なら保険商品に詳しいはずです。

HPの経歴などからそういった「前職」を探り、得意分野を予想するのもひとつの有力な方法です。

あと1点、私は税理士なのですが、税理士のなかにはFPさんが相続の相談に乗ることが税理士法違反だという人もいます。

具体的な相続税の相談の場合は確かに税理士の独占業務ですが、ケーススタディのように仮定の話でセミナーなどを行うのは違反にはならないので一般論の相談であれば大丈夫でしょう。

このあたりはFPと同様、税理士も競争が激しく、他業種が従来税理士がやっていた業務に入るのを著しく嫌う傾向にあるという現実があります。

セミナーよりも個人相談で偏りのない意見を

個人的には「個人相談」のほうがよいと思います。

セミナーは入口としてはよいのですが、問題は「セミナー」というものの構造です。

もし無料セミナーの場合、先ほどの話と同じようにどこかでお金をとる仕組みがあるはずなのです。そこでセミナー後、証券会社に口座を開くように勧められたり、銀行から住宅ローンを勧められてたり、住宅会社からリフォームを勧められたり、保険会社から保険商品を勧められたりするというオチです。

また私も経験があるのですが、セミナーで一番難しいのは「集客」です。

無名のFPが個人で数十人の人を集めるというのは、並大抵の努力ではできません。当然、「協賛」してくれる会社があるのです。そう、ここで再び銀行・証券会社・保険会社・住宅会社などが絡んでくるのです。

当然、FPとしても頑張って集客してくれた、これら会社をないがしろにすることはなかなか難しいのです。

一方個人相談だと、そうでないケースもありますが、比較的「FPが気を遣う会社」が入りにくいのです。バイアスのない意見をお求めでしたら個人相談のほうがおすすめです。

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