はじめに
【相談事例】夫婦で話し合いが難しかったAさん
相談者のAさん(40代)は夫婦共働きで、それぞれの給料から家計の分担を決め、お互いで管理されています。
乳がんになり、治療開始後は体力の低下やしびれがあり、仕事を続けることが難しかったため、事務の仕事を休職しました。休職中は健康保険組合から傷病手当金を受け取っています。傷病手当金は給料の約3分の2を受け取れるとは言っても、健康保険料や厚生年金保険料、住民税は支払うため、Aさんは元々の手取り収入よりも月5万円ほど減りました。
まずはAさんの分担の中で見直せる項目は無いか確認してみました。特別大きな金額である住宅ローンやクルマの維持費、生命保険料などは夫が担当し、食費や子どもの習いごと、生活必需品の買い替え費用などを担当していたAさん自身は大きく見直せる項目がありませんでした。
「自分ががんになったせいで迷惑はかけられない。家族には今まで通りの生活をさせてあげたい。まだ私の分の蓄えがあるから切り崩せばなんとか……」 とAさんはおっしゃいました。しかし、今後半年は薬物治療が予定されており、体力も落ちているため復職は時間がかかることが予想されました。
そこで、ご主人にお金のやりくりに関して相談しようとしても、「まだまだお金は大丈夫、いま話すことじゃない」「どうにかなるから」「きみに任せる」と話し合いに応じてくれない状況でした。なぜ夫は話し合いが難しいのかを、Aさんと一緒に考えました。
夫は乳がんの治療が始まってからまだ一度も主治医からの説明を受けたことが無いということがわかりました。都合が悪かったのか、夫自身がまだAさんの現状に向き合えていないのか、本心はわかりませんが、一度主治医からの説明に夫も同席してもらえるよう、調整していくことになりました。
一見、家計の見直しとは関係無いように思えますが、これは治療中の支出の見直しで「はじめの一歩」というべき大変重要な部分です。
実際、夫は妻が乳がんになったことをまだ受け入れられておらず、治療の大変さからは目を背けていたため、治療費や家計の大変さについても共有することが難しかったようです。主治医からの説明後、妻の現状や抱えている不安が理解できた夫は、少しずつ家計の話にも耳を傾けるようになったとのことです。