はじめに
「嫌い」はいとも簡単に伝えあう
ところが残念なことに「ネガティブな感情」に関しては話が一転します。
データ15は、こちらも普段から面識のある学生Cと学生Dに一緒に5分間話をしながら過ごしてもらったときの5分間の感情を示す脳波の移り変わりです。もちろんここでも相手に対する「好き」「嫌い」がわかるような言動は控えてもらっています。
実は、事前の聞き取りでCはDにあまりいい印象を抱いていないことがわかっていました。最初の時点から「嫌度」を示す脳波が80%と強く出ているのはそれが原因なのです。
一方のDは、Cに対して特段嫌な感情を抱いていないことは事前に確認済みだったのですが、実験を開始した直後から、Dの「嫌度」を示す脳波はすでに高いレベルになっています。CのDに対する「嫌」が早々に伝わったということなのでしょうか。
しかもその後、Dの「嫌度」を示す脳波は、Cの「嫌度」を示す脳波とほぼ同じ形になっています。
もちろんCは、Dに対する自分の「嫌な感情」は言葉や態度に一切出してはいません。
そもそも「嫌い」はむしろ隠したいほうの感情なのですから、DだってそれをCにわざわざ伝えようとしたわけではないはずです。
それにもかかわらず、スピーディーしかも正確に、Dの「嫌い」はCに伝わり、まるでDの「嫌い」がそのままCにうつったかのような現象が起きているのです。
まさに、「フキハラ」のメカニズムがみえた実験といえるでしょう。