はじめに

インフレ関連の5つの経済指標

インフレ関連の経済指標を把握することは、物価上昇率の予測や投資判断、金融政策の理解に役立ちます。そのため、経済に関心がある方は、インフレ関連の経済指標を押さえておくことが重要です。

それでは、どの経済指標をおさえておけばいいのか、5つ紹介しましょう。

(1)米国雇用統計

米国の雇用情勢を表す最も注目度の高い経済指標で、株価や為替が大きく動く傾向にあります。アメリカの労働省が毎月発表する、米国の雇用情勢を調べた景気関連の経済指標のことで、失業率、非農業部門就業者数、建設業就業者数、製造業就業者数、小売業就業者数、金融機関就業者数、週労働時間、平均時給などの10数項目の数字が発表されます。

そのなかで非農業部門雇用者数と失業率をまずチェックしてください。

非農業部門雇用者数は、非農業部門に属する事業所の給与支払い帳簿を基に集計されたものです。全米の約1/3を網羅し、非農業部門の就業者数は、景気動向を敏感に反映するといわれています。

失業率は失業者を労働力人口(失業者と就業者の合計)で割ったもので、約6万の世帯が調査対象となっています。失業率が低下すると、企業が人材を求めるための賃金を上げる必要があるため、物価が上昇する可能性があるわけです。5%でほぼ完全雇用と言われているので、最近はそれを上回る良い水準が継続していることになります。

加えて、インフレに関連する平均賃金も押さえておきましょう。

原則毎月第1金曜日に発表される米雇用統計は、日本の時間に直すと、夏時間では日本時間午後9時半、冬時間では日本時間午後10時半に発表されることになります。3月は冬時間です。今回は変則的に第2金曜となっており、3月10日(金)の午後10時半に発表予定です。

なお、2月に発表された1月の米雇用統計は失業率が予想3.6%に対して結果が3.4%と53年ぶりのよい水準となりました。非農業部門雇用者数も予想19.0万人増に対して、結果は51.7万人増と予想を大きく上振れています。失業率もよかったですが、雇用者数が市場予想を大幅に上回りインパクト大でした。

(2)消費者物価指数(CPI)

消費者物価の変動を示す経済指標の1つで、米労働省が毎月中旬に発表しており、全国の都市部における家計の消費支出を調査して算出されます。Consumer Price Indexの略です。衣料や食料品など約200項目の品目の価格の変化を調査して指数化することで、米国国内の物価の上昇・下降などの変動を表す指標となっています。

買い手側である消費者が購入した、モノやサービスなどの物価の動きがわかるため、米国国民の生活水準を把握できる経済指標といえます。ちなみに米国では消費者物価指数の中から変動の激しいエネルギー関連数値や食料品目を取り除いたものを「コア指数」といいます。

インフレ率を分析するための最重要指標としてマーケットでも注目されていますが、実際の景気よりも数ヵ月~半年遅れた遅行指数であることは把握しておきましょう。なお日本のCPIは総務省が毎月、総務省のウェブサイトで発表しており、年金などの社会保障給付を調整する際、このCPIが目安として使われています。

前回2月発表の米1月消費者物価指数(CPI)は、前月比0.5%上昇と市場予想を上ぶれ。食品とエネルギーを除くコア指数も0.4%上昇と、市場予想を上回ったことでインフレ懸念から株は売りが優勢となりましたが、前年同月比では7ヵ月連続で伸びは鈍化しています。

次回、2月の米CPIは3月14日(火)午後9時半発表予定です。

(3)生産者物価指数(PPI) 

生産者物価が出荷した完成品や原材料などの価格の変動、移り変わりを調べた指数のことで、Producer Price Indexの略です。原材料や労働力などのコストが変わると変動します。物価の変動を生産者側から測っていて、輸送コストや流通マージンなどは含まれていません。

業種や商品、製造段階などで分類されていますが、そのなかでも注目されているのが、時期的な影響を受けて価格変動が激しいエネルギーや食料品のデータを抜いた、コア指数です。市場ではコア指数の値動きの方が重視される傾向にあります。PPIが上昇するということは、最終製品の価格、消費者が購入する物価も上がるということ。つまりインフレに傾いているということになります。

2月発表の1月のPPIは、前月比0.7%上昇。前月は0.2%マイナスでしたので、前月を上回ったほか、市場予想も上振れる強い結果となりました。

次回、2月のPPIは3月15日(水)午後9時半発表予定です。

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