はじめに

減税になる仕組みは?

さて、一般的に「税金を減らす」ためには2通りの方法があります。

・所得を減額する(所得控除)
・税金を直接減額する(税額控除)

この2つには税金の計算をする工程で、「どこでマイナス(控除)を入れるか」に違いがあります。

簡易版として筆者作成

所得税の計算を簡単に説明しますと、年間の所得(お給料や事業でもうけたお金、株式の配当金など)から、所得控除額(配偶者控除などの人的控除・生命保険控除などの物的控除)を差し引き、そこに税率を掛けて税額を算出します。

算出された税額から、税額控除をして、最終的に納税額が決まります。

図の通り、同じ「控除」と呼ばれるものでも、「所得」から控除するのか、「税額」から控除するのかによって、減税効果はまったく違います。

税金そのものからマイナス(控除)をするので、住宅ローン控除は、節税効果が高いのです。

1年目は必ず確定申告が必要

では、申告に必要な書類について整理します。

<申告に必要な書類>

書類 所得場所および備考
確定申告書(A) 税務署で取得、もしくは国税庁のWebサイトからダウンロード可能です。
住宅借入金等特別控除額の計算明細書
(特定増改築等)
税務署で取得、もしくは国税庁のWebサイトからダウンロード可能です。
源泉徴収票(企業勤務者の場合) 勤務先から取得。対象は住宅購入年のもの。
住民票写し 役所にて取得。対象はローン契約者(共同名義であれば、両者ともに必要)。
年末残高証明書(住宅ローン残高証明細) ローン契約先(金融機関)より取得。複数契約がある場合は、その全てが必要。
建物・土地の不動産売買契約書
工事請負契約書写し
不動産業者および、工事請負業者から取得。
登記簿謄本 法務局にて取得。対象となる住宅のもの。
その他 バリアフリー・省エネ・耐震など、特別な適応を受ける場合は、別途必要な書類があります。

上表の通り、初年度は多くの書類提出が必要になります。

いつもは年末調整で済ませている企業勤務者の場合、めんどうに感じるかもしれませんが、申告が必要なのは初年度だけですので、必ず行いましょう(もし申告を忘れた場合も5年間までは遡って訂正申告が可能です)。

そろえた書類を見ながら、「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」に順に記載していきます。算出された金額を、確定申告書へ記入し、還付される金額が判明します。

パソコンでの入力および出力、またはオンライン申告も可能ですので、自分に合った申告方法を選ぶとよいでしょう。

オンライン申告以外の方は、書類がそろったら税務署へ提出です。提出する税務署は、住民票上の管轄税務署になります。提出期間は、「住宅を購入した翌年の1月1日~3月15日」と覚えておきましょう。

無事に申告が終わり、払い過ぎた税金がある場合は「還付金」として約1ヵ月~2ヵ月後に指定口座へ返金されます。

どれくらいのお金が戻ってくるのか?

気になるのは、確定申告するとどれくらいのお金が戻ってくるのかということですね。

平均的な家庭の実際の減税額はどのくらいなのか、次の項で試算してみましょう。

モデルケースは「年収500万円、課税所得額230万円、所得税額は約12万円、住民税額は23万円」の世帯とします。

契約した住宅ローンは「3,500万円(固定金利1.365%)の35年払い」とし、契約したのが年末。初年度1月からの支払開始とすると、その年末支払残高は約3,421万円となります。

・控除上限額:3,421万円 × 1% = 約34万円
・34万円からまず所得税の12万円を差し引き、残り22万円分を、住民税から相殺。
 ただし、実際の住民税または「課税所得額 × 7%」もしくは「13万6,500円」のいずれか一番少ない金額が住民税の控除額となるため、この場合は「13万6,500円」が該当。

したがって、実際の年間控除額は「12万円 + 13万6,500円 = 25万6,500円」ということになります。

控除ですので、使い切れなかった8万5,600円が戻って来るというわけではありませんので、還付金は25万6,500円になります。

実際の所得額によって、住宅ローン控除は満額使い切れないケースが十分にあることを、知っておきましょう。

2年目以降は年末調整で完了

企業勤め人の方の場合、2年目以降は確定申告を行う必要はありません。

会社の担当部署へ「年末残高証明書」を添付し、控除額は初年度に作成した「計画明細書」のとおり記載します。ただし、繰り上げ返済などで年末残高が変わっている場合は、事実に基づいた記載が必要です。

自営業者の方は、引き続き確定申告を行う必要がありますが、初年度とは異なり、こちらも残高証明だけで済みますので、多くの書類をそろえる必要はありません。

確定申告は難しそうと恐れずに、ぜひ今から準備してつつがなく申告を行ってくださいね。

この記事の感想を教えてください。