はじめに

本決算前に駆け込みで出された両社の修正情報

そして出てきたのが冒頭で挙げた2023年4月21日(金)の同時修正発表です。ここまで時系列で追ってみれば、どのような修正が出るか予想はつきます。

まずは伊藤ハム、こちらは2度目の上方修正。

画像:伊藤ハム米久HD「業績予想の修正に関するお知らせ」より引用

前回修正された①営業利益22,000(百万円)から②23,000(百万円)と③4.5%の増益率。当初の予想21,000(百万円)からすると9.5%上方修正したことになります。修正の理由は、行動制限の緩和などによる外食向け食肉販売の回復に加え、加工食品の販売数量が想定を上回って推移したことが挙げられています。最後の3ヵ月で、一気に経済再開の追い風が利益を押し上げてくれたようです。

一方のプリマハムは、2度目の下方修正になります。
※初出時に社名に誤りがありました。

画像:プリマハム「業績予想の修正に関するお知らせ」より引用

前回修正された①営業利益11,000(百万円)から②9,700(百万円)と③−11.8%の減益率。当初の予想16,100(百万円)からは、−40%とかなりのブレとなりました。下方修正の理由は「原材料及びエネルギーコストの上昇が続く中、価格転嫁に時間を要している商品があること」とあります。当初、営業利益は増益で着地予定でしたが、結局は減益の着地となりそうです。

両社の明暗を分けた理由

上方修正を2回した伊藤ハムと、下方修正を2回したプリマハム。修正幅率でみてもプリマハムの当初予想の見積は甘かったように感じますが、それでも、原材料高やエネルギー高、円安進行といった外部環境は同じでした。

それでも明暗を大きく分けた理由はふたつあります。

(1)伊藤ハム米久HDは、海外に食肉事業会社を保有しており、海外における食肉価格が上昇したことで、大きく売上利益に貢献している。
(2)伊藤ハム米久HDは、国内においても価格転嫁を進めている一方で、プリマハムは価格転嫁が遅れている。

2022年は世界中でインフレが急激に進行しました。海外に販売拠点を持つ食品会社は、インフレにうまく乗っかり、値上げすることで、売上利益を大きく伸ばし、国内だけで商売している食品会社との差を広げました。ハム業界も同様のことが起こったようです。

伊藤ハムの主力商品の「アルトバイエルン」、もう一方のプリマハムの主力製品「薫燻」。わたし自身は正直、この2商品に大きな違いを感じていませんが、価格転嫁できる商品とできない商品の差は、値上げしてもついてくるファンがいるかどうかの違いなのでしょう。

ちなみに気になる株価推移ですが、2023年3月期の通期予想を発表した2022年5月9日(月)から、直近の修正を出した2023年4月21日(金)までを比べると、伊藤ハム650円→717円(+10%)、プリマハムは2,186円→2,292円(+4.8%)と、じつはどちらも上昇しています。

画像:TradingViewより

食品会社には、経済再開の期待も乗っているので、減益企業にちょっと甘い気もしますが、重要なのは、これから発表される新年度予想です。それぞれがどういった予想値を出してくるのか、プリマハムは5月8日(月)、伊藤ハムは5月9日(火)発表予定ですので、ゴールデンウィーク明けを楽しみに待ちたいと思います。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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