はじめに
贈与がなかったことに?
実は、亡くなった時から3年以内の法定相続人への贈与はリセットされるというルールがあるのです。余命3年と宣告されて、慌てて贈与を3年間しても、それらはリセット−−つまり、なかったものとして相続財産に足し込みされるということです。なんて……嘆かわしい!
もしも、110万円以上の贈与があって贈与税を納めている場合は、ちゃんとその分も加味して精算してくれます。ところが、この3年ルールが今年の改正で変更になるのです。
リセット期間が3年から7年に
令和5年度の税制改正で、この3年リセットルールが7年になるというのが決まりました。今後、2024年以降の贈与について該当することになります。
リセットの延長と聞くと、「なんて……嘆かわしい!」かと思いきや、もう1つ別のルールが付け加わりました。追加されたルールは「延長した4年分は100万円までは足し込まなくてOK」というもの。つまり、長年コツコツと100万円ずつの贈与は、3年より前の分は相続財産として足し込みされないので、生前贈与が変わらず有効になる、ということです。
改正を踏まえた節税のポイント
これらを踏まえて相続税を減らすには、とにかく元気なうちに100万円ずつは子どもや孫などに贈与をしておくことが重要です。なお、贈与税の基礎控除110万円については、受け取る側で計算するので、両親から100万円ずつ贈与を受けてしまうと、子どもが200万円をゲットして、基礎控除110万円を引いた残り90万円に10%の税金、つまり9万円の贈与税を納付することになります。気をつけてください。
また、リセットされない人というのを知っておくことも必要です。
実は、3年以内・7年以内のリセットルールは、「法定相続人」についてされます。つまり、孫や甥・姪、従兄弟など、法定相続人以外は3年や7年以内でも相続財産への足し込みがされないということです。たとえ、余命1年となっても、孫に贈与すればその贈与税だけで済ませることが可能になるということです。贈与するメンバーについても、正しい知識でしっかり整理しておきたいですね。
ただし、法定相続人以外が相続をする場合は、その人の分の相続税が2割増しになるので注意が必要です。孫などには贈与はするけれど、相続しないよう検討しておきましょう。
まずは財産の確認を!
対策するにしても、とにかく自分や親が一体どれくらいの財産を持っているのかを把握するところから始めなければなりません。現預金・株式・不動産・保険商品や退職金など、どれだけの財産があるのか、確認しながらリストにしておきましょう。
相続は「争族」と漢字が当てられるように、亡くなった方の意志が残された方々に正しく伝えられず、仲の良かった家族が財産をめぐって争い合うことが多いと言われています。私も実際に、仲の良かった兄弟が絶縁状態になったケースなど見てきました。そんな兄弟の様子を故人はきっと悲しんでいます。そうならないよう、遺言状を残すことも重要だと言われていますね。
読者の皆様はNISAなどの資産形成もしっかりしていらっしゃると思いますので、元気なうちに財産のことをしっかりと家族で話し合って、相続税対策についても理解し合える、そんなご家族であってほしいなと思います。