はじめに
懲戒に関する規定
最後は、これまでとは少しタイプが違います。懲戒や罰則に関する規定という、ご自身が会社に対して守らないといけない事項になります。
社員は会社から給与を受け取る対価として、会社の業務指示に従い、会社に損失を与えないように行動することが求められます。この損失とは、これは必ずしも金銭的な評価ができるものに限りません。会社という集団生活を乱すような場合も含まれます。
会社が業務指示に従っていないと判断する場合や、会社に損失を与えたと判断する場合には、会社は該当する社員に処罰を与えることがあります。処罰を与える権限を会社に与えるための根拠が、就業規則の中の懲戒規定や罰則規定になります。
懲戒処分の中には、軽い方から順番に、戒告・譴責・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇などがあります。より細かく規定していたり、言葉が違ったりすることはあるかと思います。一口に懲戒処分といっても、いろいろな種類があるのだということを知っておいてください。会社は、事前に就業規則に定めて社員に周知徹底していない種類の処分をすることはできません。
また、懲戒事由として懲戒処分の対象となる行為についても、就業規則には規定されています。懲戒事由に該当する行為が行われた場合、定められている懲戒処分の中のいずれかの処分をされることがある、ということになります。
どちらかの規定が欠けている場合、懲戒処分を有効に行うことは難しいことになります。また、懲戒処分と言っても、いきなり誰でも彼でも懲戒解雇にすることはできません。初めての行為なのか、どの程度の問題を発生させる行為だったのか、ということを慎重に判断して、重すぎる処分にならないように、適切な処分を選択しなければいけません。会社は対象となる社員に対して、対象者ごとに恣意的に処罰を重くすることは許されていません。
思ってもみないことで処罰されないように、どういった行為を禁止しているかはきちんと把握しておきましょう。とは言っても、くれぐれも「この行為は規定されていないから、悪いことだと思うけどやってしまえ!」などという、逆の判断には使わないでください。「その他これに準ずる行為」のような懲戒事由を定めている会社が多いですから、慎重に行動することが必要です。
昨今はSNSが普及して、軽い気持ちでご自身の業務中のできごとや、職務中に撮影した写真をSNSにアップしてしまうことがあるかと思いますが、こういった行為が会社の業務指示違反や会社に損失を与える行為と判断される可能性は高いです。これの非常に悪質なものとしてバイトテロと呼ばれる様な、バイト中の本人たちにとっては悪戯のつもりの動画などがニュースになっていることがあります。刑事事件に発展したり、高額の民事訴訟に発展したりすることがあります。
会社によっては、SNSに関する特別な規定を設けている会社もあります。あとから知らなかったといっても、それで許してくれる会社は殆どないでしょうから、SNSとの付き合い方は特に注意が必要になるでしょう。
特に注意して確認しておいていただきたい就業規則について解説してきました。一つ一つの項目で、1回のコラムにしてもいいほどお伝えしたいことが多い内容なのですが、今回はざっくりとまとめてみました。
これを機会に、ぜひ就業規則に目を通してみてはどうでしょうか。もしかして、何処にあるのかわからない、なんていう衝撃的な事実に気付くかもしれませんよ。