はじめに

現行NISA利用者がするべきこと

つみたてNISAを行っている方は、自動的に新NISA口座が開設されるので、特別に何もしなくても現状のまま投資が継続できます。投資枠が広がりますが、無理に積立額を上げる必要もありません。

ただし、運用商品選びとつみたて計画は練り直しましょう。新NISAになってもスイッチングはできず、運用商品を見直す場合は非課税期間の途中で売却するしか方法がありません。NISAの性質上、長期で同じ商品を持ち続ける方が適しているので、現状の運用商品でいいのかは考えたいところです。

また繰り返しになりますが、これまでは年間40万円と比較的少額での投資でしたが、つみたて投資枠の対象となる投資信託であれば、年間360万円までも使えるようになります。長期目標の設定と、それに応じたつみたて計画も立ててみましょう。

現行のつみたてNISAについては20年間の非課税期間を十分活用したうえで、ライフプランに合わせて解約します。毎年少しずつ取り崩してもいいですし、一括で全額を解約してもいいでしょう。

一般NISAの場合は、新NISAスタートによりロールオーバーができなくなるので、これまで以上に注意が必要です。例えば2023年末には2019年に投資をした一般NISAの非課税期間が終了します。この時の選択肢は課税口座に移すか、売却するかの2択となります。

課税口座に移す場合、時価となるため仮にマイナスの状態になっていたら、マイナスからのスタートになります。例えば100万円でA株を買っていて、5年の非課税期間終了時の80万円のタイミングで課税口座に移すと、80万円が購入価格とみなされてしまうのです。その後100万円に戻ったとしても、20万円の利益と認識されるので税金がかかります。もしその投資商品に見切りをつけ売却をするのであれば、NISA非課税期間内で売却した方がいいでしょう。

利益が出ている場合、非課税期間内に売却してもいいですし、継続を希望するのであれば新NISAで買い直すことも可能です。タイムラグが発生するため、思った通りの売買ができないかも知れない、というのはご承知おき下さい。

また、特に上場株式で運用をしている方は、新NISAとなっても損益通算や損失の繰り越しはできないため、今後の運用方針によっては課税口座を利用するべきかどうかは精査したいところです。年間投資枠240万円が魅力で個別銘柄の運用を継続するのであれば、無期限の非課税期間を有効活用できるような銘柄、例えば高配当銘柄などを新NISAで購入し、そのほかは課税口座を活用するというのもいいかも知れません。

ETF、REIT、あるいは投資信託を一般NISAで運用していている場合も、ロールオーバーができないので、考えるべきポイントは上記と同様です。損をしていても、利益がでていても、もう少し待ちたいという気持ちがある方も多いですが、非課税期間が順次終了すると、一般NISAは「解散」となりますので、気持ちもあわせて整理が必要です。

情報を待ちつつ、早めの行動を

2023年5月末現在、新NISAに関する情報は十分とは言えません。

例えば、新NISAの成長投資枠で扱う投資信託については信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託、及びデリバティブ取引を用いた一定の投資信託などを除外するという方針がすでに出されています。しかし、具体的に各金融機関が成長投資枠でどの投資信託を扱うのかは公表されていません。

また、つみたてNISAの対象となっている投資信託は228本ありますが、これらすべてを扱っている金融機関はありません。一般的にネット証券は多数扱っていますが、銀行の場合1本しか扱っていないというところや、4~5本というとこもざらにあります。そもそも一般NISAだけで、つみたてNISAはしていないという金融機関もあります。

これについては、新NISAスタートにあたり、つみたて投資枠に新たに対象となる投資信託が追加されるかも知れませんし、信託報酬の更なる引き下げなどがおきるかもしれません。また、各社の取扱商品が増えることも考えられます。

今後の情報開示によっては、新NISA口座は今とは別の金融機関で開設しなおすというケースも出てくるかも知れません。その場合は、1月からスタートするための口座開設締め切りが設定されるでしょうから、遅れないよう手続きをしましょう。


個人的には今後、過度なNISA口座獲得キャンペーンが行われることなく、この制度が本当の意味で国民の資産所得倍増のために役立つように願っています。また一人一口座とされていますが、複数口座を併用可能とすることで、金融機関サービスの利用が広がったり、NISAで積立をしている人は住宅ローンの金利優遇が受けられたりなど、人生をより豊かにする資産形成を応援するサービスが出てくることを期待しています。

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