はじめに
iDeCoを使って自分でコントロールする
退職所得控除の変更は、iDeCoにも影響があります。まず前提として、iDeCoを60歳以降で受け取る場合は、以下の3つの方法があります。
(1)一括で受け取る
(2)分割で受け取る
(3)一括と分割を併用する
退職金との兼ね合いで受け取る金額を調整すれば、少ない税額で受け取ることができ、うまくいけば税額をゼロにすることも可能です。ポイントとなるのは、退職金を受け取るタイミングと、iDeCoの一括受け取り分のタイミングをいつにするのがいいのか、ということです。
iDeCoと退職金の両方を受け取る場合は、退職所得控除額はどうなるのでしょうか?
iDeCoは掛け金を掛けている年数分を退職所得控除額の計算式で利用します。もし、iDeCoの一括受け取り分を先に行い、そのあとで退職金を受け取る場合は、5年以上開けて受け取ると退職所得控除額がリセットされて、退職所得の金額を計算することが可能になります。iDeCoを後で受け取る場合は20年以上開けなければリセットされません。
退職所得控除額ほど退職金を受け取る予定がないのであれば、年数を気にせず受け取ることができます。しかし退職金の額が大きく、iDeCoの一括受け取りも行いたい場合は、60歳以上でかつ退職より5年以上前に、計画的に早期受け取りをしておく必要があります。または、iDeCoは分割で受け取るというのも対策になります。
ここから、65歳で勤続年数30年、毎月2万円ずつリターン年率3%で20年間iDeCoで積み立て運用していたAさんを例にみていきましょう。
Aさんの場合、退職所得控除額が800万円 + 70万 × 10年 = 1,500万円、つまり退職金が1,500万円までなら、確実に税額が0円で退職金を受け取ることができる、ということです。またAさんのiDeCoの受取額は、複利計算で約650万円とします。
この場合、iDeCoはどう受け取るといいのでしょうか?
まず一括で受け取る場合、退職金で退職所得控除額を使い切ってしまったなら、受け取り金額約650万円すべてに退職所得として税金がかかります。半分の金額に5%をかけると162,500円です。もし退職金が1,500万円よりも少なかった場合、残りの控除を使っていない部分、1,500万円から退職金を引いた額分の税金が安くなります。
次に分割で受け取る場合、650万円を10年間65万円ずつ受け取るとすると、それ以外の年金がなければ65歳以上なら控除額110万円の範囲内で全て受けることができるので、税額は10年間ずっとゼロです。65歳未満なら60万円の控除額を超える5万円部分に税金がかかり、所得に応じて15%以上の税金が発生してしまいます。
つまり、退職金が控除額よりも少ないなら、控除額の範囲内で受け取るとお得ですが、年金をもらっているタイミングでさらに分割分を受け取ると税率が高くなるので損になります。年金をもらっていないタイミングで分割で受け取ったり、年金の控除の範囲内で受け取れるように金額設定すると最大限の節税ができます。
計画的に受け取るだけで、これだけ税金をおさえられるなんて、「なんて……喜ばしい!」ですね。
退職所得控除額が引き下げになるかもしれなことは、「なんて……嘆かわしい!」ですが、それでも正しい知識を身につけて、ご自身の老後資金を正確に見積もれば、税金は安くすることができます。ぜひ、老後資金は計画的に受け取ってくださいね。