はじめに
仕事場に向かって原宿の竹下通りを歩いていると、ドラッグストアに外国人観光客が戻ってきているのを感じます。インバウンド需要に沸いていた2019年は、爆買いする外国人客で溢れかえっていたドラッグストアですが、コロナ禍で訪日客はさっぱり。訪日客用に備えられていたタックスフリー専用のレジも、撤廃されていました。
ところがここ最近は、日本人より外国人客のほうが多く感じることもしばしば。かつて大半をしめた中国人観光客はまだ少ないですが、タイや韓国、インドなどアジア圏の方々や、欧米からの観光客の姿も多くみかけます。
入国制限が解除される前から、インバウンドの復活需要はかなり期待されており、資生堂やコーセーなど化粧品メーカーは、2023年に入ってかなり株価が上昇しました。たしかに、化粧品メーカーの業績は回復基調にありますが、こちらはインバウンド需要が牽引しているというより、国内のリオープン需要といったほうがしっくりきます。デパートでメイク用品のテスターをお試ししているのは、日本人客がほとんど。
その理由は、コロナ禍でeコマースが浸透し、訪日せずとも化粧品が買えるようになったためだと考えられます。となれば、「#シン・インバウンド」ともいうべき、これからのインバウンド需要期待での銘柄選びのポイントは、日本でしか買えない商品を販売しているかどうかに注目する必要があります。
販売規制が厳しいOTC医薬品に商機あり!?
eコマースが発達し、世界中のどこにいても日本製品が買えるようになった昨今でも、じつは日本でしか買えないものがあります。OTC医薬品と呼ばれるもので、薬局・薬店・ドラッグストアなどで処方せん無しに購入できる医薬品を指します。ちなみにOTCは「Over The Counter」の略です。これらOTC医薬品は、法律による販売規制が厳しく、日本でしか購入できない製品が多いため、訪日外国人にはもってこいのお土産になるのです。
OTC医薬品に強く、お土産として大人気なのは、なんといってもニチバン(4218)の“ロイヒ”シリーズです。ニチバンは、2019年に過去最高売上、最高純利益を記録していますので、旧インバウンドの恩恵をめいっぱい受けていえるといえるでしょう。最近は、インバウンド需要に対応して、ワゴン売りされているのも見かけますが、決算にその結果は現れているでしょうか?
直近2023年5月12日(金)に発表された2023年3月期の決算を見てみましょう。
画像:ニチバン「2023年3月期(第119期)決算短信」より引用
①売上高45,560(百万円)、②前年同期比+5.6%、③営業利益1,609(百万円)、④前年同期比△34.3%と売上こそやや伸びていますが、営業利益は大幅減益。まだ、#シン・インバウンド需要の効果は現れていないようです。
しかし、決算短信内には「鎮痛消炎剤“ロイヒ”シリーズについては、国内需要拡大に向けて、テレビCMやキャンペーンなどのPR活動を行いました」といったことが書かれています。
決算説明書の事業フィールド別売上高を確認すると、ロイヒシリーズが属するヘルスケアの売上高は、前期比10.7%とたしかに回復の兆しを見せています。
画像:ニチバン「2023年3月期 決算説明会 全データ」より引用
今期2024年3月期の営業利益予想は①2,800(百万円)、②前年比+74%と大幅増益予想ですので、#シン・インバウンドに多いに期待できそうです。
画像:ニチバン「2023年3月期(第119期)決算短信」より引用