はじめに
お笑い芸人・よゐこの有野晋哉さんが、毎月さまざまな専門家をゲストに迎えて、お金の知識を身に付けていく「お金の知りたいを解決!お金の学園〜学級委員・よゐこ有野晋哉〜」。2023年7月は社会保険労務士・ファイナンシャルプランナーの井戸美枝先生に、終活について伺いました。
今回は、「終活で整理しておくべきこと」について。4つあるそうですが、何かわかりますか?
有野晋哉(以下、有野):前回の終活の授業を聞いてから、グラビア写真集の整理をやり始めたのはええのやけど、「懐かしいなー」って見てしまって、気づいたら夜! 全く進まんなぁ……。
井戸美枝(以下、井戸):有野さん、何やらお悩みのようですね。
有野:あ、先生! 「残された家族のことを考えて」というお話しを聞いて、趣味のグラビア写真集の整理を娘にやらせるわけにはあかん、と思ってやり始めたんですけど、ちっとも進まないんですよ。若いころに買った写真集を見つけると、つい見てまうんです(笑) 「この写真集の頃、ノってるなー! 今は幸せなのかな?」ってSNS探して、「フリーでやってるのか!」「地元帰ってるやん!」「楽しそうで良かったなぁ」なんて、やってたら全然時間が足りない、でも、凄く充実しています。
井戸:それは仕方ありませんよ。思い出を振り返るのも終活の1つです。大切なのは、「終活をしよう」という気持ちを持ち続けること。「できることから、少しずつ」でいいんです。
有野:そうかぁ~。確かに思い出の整理も大事ですね。「あの人にこれ伝えるのを忘れていた」とか、やり残していることを思い出す可能性もありますし。あ、そんな事も全部書いていって、思い出したら、色んな人に電話かける日とか設けたらいいのか。
井戸:「終活」では、モノの整理だけしておけばいいというわけではないんです。ご家族やご友人、仕事関係の方などへの「感謝の気持ち」を伝えるのも、終活の上で大事なこと。悲しいことですが、そういうものも認知症が始まってしまうと、思い出すのが難しくなってしまいます。
有野:そうですね。送る方も送られる方も、そういうのはスッキリさせておきたいもんなぁ。自分が死ぬ間際になって、「あ、あれやるの忘れてた!」ってなったら、死ぬに死なれへん(笑) 「ありがとう」って言うといて、って事でもないし。
介護に必要な費用
井戸:さて、前回は「なぜ終活が必要なのか」についてざっくりとお伝えしました。今回はもう少し具体的に、終活で必要なことについてお話ししましょう。終活で考えるべきことは、「人・モノ・お金」、さらに「意向」の4つです。
有野:4つですか、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』に出てくる神殿の数と同じですね! 風・炎・水・雷! 僕はね、雷の神殿が……すみません、続けてください。
井戸:「人」とは、終活する当人の医療や介護について。「モノ」は住んでいる家をはじめ、その人が所有しているモノの処分をどうするかということ。「お金」は、生活や介護、お葬式などに必要なお金のことです。そして「意向」は、当人がどうしたいか、何をしてほしいかを確認しておくことですね。延命治療の意思なども含まれます。
有野:うわぁ、1つもできてない(笑) やることが山積みやなぁ。嫌になっちゃう。
井戸:「できることから、少しずつ」です! まず、当人の介護についてお話ししましょう。介護の準備をする前に知っておきたいのは、親が年金だけで生活できているのか、それとも貯金を取り崩して生活しているのか、あるいは資金援助が必要な状態なのか。基本的には、親の介護は親の貯金や収入で行うべきだと私は考えているのですが、そうするためには当然、親の収入と支出を把握することが肝心です。
有野:それも全く知らないですね……もともと僕が子どものころから、お金の話はしたがらない親だったっていうのもあります。時代的にそうでしたもんね、子どもはお金の心配するな、って。20歳の頃に団地からマンションに引っ越して、「家賃いくらなん?」て聞いたら、「ココ買ったで」って母親に言われて驚いたなー。「金あるんや!」って。
井戸:終活をする当人が介護を必要とするようになった場合、お金や体制の準備ができているかは、きちんと考えておいたほうがいいですね。「生命保険文化センター」が行ったアンケートでは、公的な介護保障を利用した7割以上の人が金額的に「足りない」と回答されています。
有野:えー、足りないの!? でも、自分の親が7割に入っているのかは聞いた方が早いですね。いつ介護が必要になるかもわからへんし、介護のレベルによってもかかってくるお金も違うやろうし、そもそも何歳まで生きていられるかによって、用意せなあかんお金も変わりそうですね。わー、大変! 子どもの学費が終わったと思ったら、親のそういうのが始まるのか。って考えたら、やっぱり親にお金いくら持ってるのかは、絶対聞かないとあきませんね。
井戸:おっしゃる通りです。このアンケートでは、約半分が「介護に向けた資金的な準備をしている」と回答されていますが、そもそも「いくら必要なのかわからない」という方が多いと思います。
有野:入っていたら、保険を使えるんじゃないですか?
井戸:民間の介護保険では、介護のレベルによってもらえる保険金が変わるなど、さまざまな種類の商品があるにはあります。ただ、すごく売れているかというと、そうでもないようですね。統計では、預貯金や、貯蓄性の高い商品で積み立てている方が圧倒的に多くなっています。
有野:いつ必要になるかもわからへんし、積み立てておこう、って感じですかね。なるほどねぇ、さすが「子どもはお金の話せんでええねん!」って世代です。
井戸:介護が必要になった場合、亡くなるまでにどれくらいのお金が必要だと思いますか?
有野:前回の授業で習った、健康寿命や! そこから寿命の間ですね? え~、全然わからへん。賃貸に住んでたら、住んでる分家賃かかるし、食費や光熱費に、あと薬代もいるかな、って考えたら普段僕らが生活してる分かける寿命だから……そういえば「2,000万円問題」ってありましたね。これやな、必要な額は。ってことで、2,000万円です!
井戸:「老後2,000万円問題」は、仕事を引退した後、余裕のある老後の日常生活を送るために必要な資金の額です。ある程度の医療費は考慮されていますが、介護費用は含まれていませんね。介護に必要なお金は、平均して月に7万円程度。合計では500~530万円程度というデータがあります。
有野:ってことは、老後に向けて2,000万円に介護で500万円ほどで、合計2,500万円くらいは貯めておかなあかん、ってことか。マンション買えるなぁ……。
井戸:ただ、介護費用はすごく個人差が大きいんです。500万円はあくまで統計上の平均というだけで、介護期間が「1年未満」の方が10%程度いる一方で、「10年以上」という方も18%くらいいらっしゃるんです。あらかじめ介護期間は予測できませんから、とりあえずは500万円という数字をメドにしていただけるといいでしょう。