はじめに
住み替えは慎重に
井戸:介護というテーマでは、「終のすみか」をどうするかということも関係してきます。みなさん、介護も最後の時も、やはり「可能な限り自宅で」と考える方が多いでしょう。ただ、実際には介護付き施設だったり、病院で過ごされたりする方が多いんです。
有野:そうでしょうね。死ぬときはポックリいきたいけど、自分で決められるわけじゃないですもんね。家は売って、夫婦で介護付きマンションかなー。そこに孫が遊びに来る、ってなんか味気ないけど。この問題も悩ましい!
井戸:自宅で過ごされる場合は、バリアフリーのリフォームが必要になるかもしれません。もしくは、住みやすい地域への住み替えを考える方もいらっしゃるでしょう。
有野:そういえば一時、田舎への移住が流行りましたね。僕も孫が遊びに来るなら田舎がいいなあって、ぼんやり考えてました。でも、田舎やと病院遠いやろうし不便やしなー。これも悩ましい!
井戸:住み替えについては、しっかり考える必要があります。というのも、年を重ねてから住んでいた地域が変わるのは、場合によってはストレスを生みかねないからです。これまでのコミュニティを捨て、新たなコミュニティーに入り直すのは、それだけで心労がかさむもの。私もそうだったのですが、水が合わなくて体調を崩してしまう可能性もあります。
有野:なるほどなぁ、年を取ってから新たに人付き合いをはじめなあかん上に、土地も勘ないしストレスになりそう。旅行で離島に行った時、大阪から引っ越してきたって女将さんと話した事あるんですけど、「大阪よりいいですねぇ」って話したら、「こっちはこっちで大変ですよ」て言うた顔が忘れられない! その後、夫婦で会議になりましたよ、「なにがあったんやろ?」って。片方が楽しくても、もう片方はどうやろ、とか考えてあげないとね。どっちが残るのか分からないし。心配で僕は先にポックリいけないですね(笑)
井戸:ちなみに介護目的であれば、家のリフォームに介護保険が活用できるんです。きちんと家族で話し合ってから決めるのがいいでしょう。
有野:へぇ〜、リフォームって介護保険使えるんや!
井戸:「住宅改修費」という名目で、介護保険が活用できます。ただし、要介護の認定を受けている必要がありますし、補助金の額も20万円とさほど多くありません。リフォームにかかるお金はケースバイケースですが、バリアフリーや水回りのリフォームには500万円から700万円程度のお金がかかる場合が多いようです。
有野:それくらいかかるか~。保険適用されるか分からへんなら、元気な内にバリアフリーにリフォームしてる方がいいですね。どっちの親も遊びに来れるし。ただ、700万円は高いな!
井戸:リフォームも住み替えも動けなくなってからだと難しくなるので、元気なうちに「介護の体制を整えておくこと」が大切です。介護施設の見学などもそうですね。
有野:うちのオカンの場合、「介護施設の見学? いやや、まだまだ元気です! 今日もプール行くねん」って言いそうやなぁ(笑)
井戸:実際、元気なうちに終活の話をするのを嫌がる方は少なくないんです。この場合、「自分たちも子どもに迷惑を掛けたくないし、終活を少しずつ進めようと思っている。だから、一緒にやっていこう」という姿勢で臨むといいでしょう。