はじめに

終活は3世代で行うのがベター?

井戸:「モノ」の終活は、残された人たちが困ることがないように、親の資産や思い出の品などをどうするか話し合っておく、ということです。これは前回の授業でもお話ししましたね。

有野:そのお話しを聞いたので、グラビアの整理を始めました。奥さんや娘に大量のグラビアの処分させることを考えたら、急に恥ずかしくなってもうて(笑)

井戸:残された人たちのことを考えるのは、終活にとって大事なことです。売って大した金額にならないものでも、亡くなった人の“想い”が込もっているモノがあるじゃないですか。あらかじめ本人にどう処分するのか聞いておけば、処分に悩むことはなくなります。モノの整理には不動産も入りますが、これについては遺言と相続の時に詳しくお話しましょう。

有野:オトンが亡くなった時は、何も本人から聞けていなかったので大変でした。

井戸:本人の「意向」は大事にしたいですし、持っているモノの処分だけでなく、亡くなった時に連絡をすべき人はいるのか、どのようなお葬式をしたいのかなど希望を聞いておくと、家族も気持ちよく見送ってあげられると思います。

有野:オトンの時に、業者さんから「お葬式では、お父様の好きな音楽に合わせて会場でスライドを投影しますので、お好きだった音楽を教えてください」って聞かれたんです。でも、僕も母親も兄ちゃんもお姉ちゃんも知らなくて。「あのカセットよく聞いてたんちゃう?」「いや、あれはもらいもんや」「カラオケでよく歌ってた曲は?」「あの曲はお葬式っぽくないやん」なんてやり取りをして(笑) 結局、サザンオールスターズをかけてくれて、行った事ない海の綺麗な島の映像と父親が写ってました。

井戸:生前の意向を聞いていないと、どのようなお葬式にすればいいかわかりません。最近では、家族葬を選ばれるケースも増えていますね。

有野:生前に仲の良かった人、仕事でお世話になった人が大勢いれば「ちゃんとお葬式やらな」っていう気持ちになると思うんですけど、そうでないなら「家族葬でええか」って考える人が多いのはわかります。オカンには亡くなったことを誰に伝えるか、とかも聞いておかなあかんなぁ。じゃないと、年賀状がずっと届いたりしそうやし。

井戸:いま、有野さんはご両親のケースについてのお話しをされていますが、それらはすべて有野さんご自身のケースについても当てはまることなんですね。

有野:あ、確かにそうや! 完全に「オカン大丈夫か? ちゃんとさせないとな」って人ごとでした(笑) 忘れてた、ご自身だった!

井戸:私は、終活は親、自分、子どもの3世代で行うものと考えています。有野さんと有野さんのお母様、奥様とお子さん全員の心の負担を減らすことができるよう、みなさんで取り組むべきだと思うんですね。私は、母が亡くなった時の手続きの場に子どもを連れていって、いろいろと経験してもらいました。そうすれば、子の世代も終活に頭を悩ませることもなくなるからです。

有野:へぇ~、それはすごいなぁ。確かに手続きとかは経験しないとわからへんやろうけど、自分が死んだ時のことを子どもに経験させるのは、ちょっと勇気が要りますね。僕の子どもは高校生なんですけど、まだ早くないですか?

井戸:確かに、若いうちは嫌がるお子さんが多いかもしれません。私の場合は、自分の「人・モノ・意向・お金」の4つを文章にしたためて、クラウド上で一括管理しています。それを子どもだけが見られるようにしておくんです。

有野:クラウドで一括管理出来る時代なんや! なるほどなぁ、それなら心の準備ができてから見れますもんね。僕もそうしてみようかな、「この写真集は秋葉原のこの店にあげてください」とか。

井戸:やっぱり、まずは写真集からなんですね(笑)

有野:すみません、どうしても気になってもうて(笑)

次回(7月18日配信予定)は「終活の切り出し方」について聞いていきます。

有野晋哉
1972年2月25日生まれ。大阪府出身。テレビやラジオ、CM、雑誌の連載などマルチに活躍。コンビで公式YouTube「よゐこチャンネル」も開設しており、幅広い世代から支持を得ている。自身が50歳を迎えた2022年に、お金にまつわる知識の大切さに目覚め、日々勉強中。

井戸美枝
井戸美枝事務所代表。神戸生まれ、関西大学社会学部卒。1990年に社会保険労務士の資格を取得し、神戸市内に社会保険労務士事務所を設立。1993年にはAFPの資格を取得。1996年にはCFP認定者となり、社保労務士に加えてFP業務も展開する。生活に身近な経済問題や年金・社会保障問題を中心に、新聞や雑誌で連載を持つなど幅広く活躍。「難しいことでもわかりやすく」がモットー。著書に『親の終活 夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!増補改訂版』(日経BP)ほか多数

ライター:新井奈央

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