はじめに
シングルの場合は「おひとりさま信託」の活用も一手
有野:少し気になったんですけど、もし夫や妻がおらず、自分1人だった場合、終活はどうなるんですか? 認知症になると、銀行口座とか契約関係の手続きができなくなるって話でしたし、終活どころじゃなくなる気もしますけど。
井戸:そうですね。配偶者や子どもがいない方も珍しくありませんし、その場合は自分1人でいろいろと準備しておく必要があります。
有野:奥さんや子どもがいれば「こうしてほしい」って伝えておいたり、メモを残したりしておけば安心やけど、そういう相手がいない場合、どうすればいいのか全然わからへん……僕がまだ独身やった場合か、松竹芸能の後輩か? クロちゃんか? 絶対散財されるやん、 アカン。なすなかにし! 「お墓にセンターマイク立てましょうよ」って、僕漫才師じゃないのにやられそう! 森脇健児さん! アカン、先輩や。う〜ん、メッチャ人を選ぶなぁ(笑) 結婚してて良かったな。
井戸:周囲に迷惑をかけるようなことは嫌、という方が多いと思います。自分1人の終活もやることは同じですが、死後の手続きがスムーズにいくように、「成年後見制度」を使って、誰かに「後見人」になってもらうといいでしょう。
有野:「後見人」って聞いたことある! でも、家族から頼まれるなら受け入れられるけど、自分の死んだ後の手続きを知り合いに任せるって、よっぽど仲良くないと気が引けてしまいそうです。任される方も、困りそうですね。
井戸:そういう場合は、行政書士などに依頼して「死後事務委任契約」を結ぶといいと思います。葬儀や埋葬をはじめ、死後の手続きを代行してくれる契約です。ただ、費用の相場などは事前によく調べておくべきですね。その上で、こちらの話を真摯に聞いてくれる人を選びたいところです。
有野:ビジネスとしてのほうが、確かに頼みやすいかもしれませんね。
井戸:もう1つ、おすすめしたいのが「おひとりさま信託」の活用です。
有野:おひとりさま神託……? なんですか、その神のお告げみたいなやつは。周りの人に「有野はそろそろHPが減って死にそうですよ」って友達に告げてくれるんですかね?
井戸:その「神託」ではなく、財産を信頼できる相手に託すほうの「信託」です(笑) 投資信託の信託ですね。
有野:そっちね(笑) そっちしかないですね。それで、その「おひとりさま信託」ってなんですか?
井戸:おひとりさま信託は、シングルの方の終活をサポートするサービスで、主に信託銀行がやっているサービスです。お葬式代やお墓の費用などを預けておくほか、死後の手続き、エンディングノートや遺言書の保管、家の片付け、公共料金の解約、残されたペットの世話など、死後に必要なさまざまな手続きや対応を代行してくれるんです。また、入院や介護、成年後見人の申請など、まだ存命している時のサービスも展開しているところもありますね。
有野:全部やってくれるじゃないですか、めっちゃ便利やん! そんなサービスがあるんですね。信託銀行が「おひとりさま信託」やってるという、夢で神託を蒙った、って言いたい! 違う。独身の方にも安心のサービスがあるって事ですね。でも無料でやってくれるんですか?
井戸:ただし、基本の申し込みに数百万円程度の資金が必要だったり、代行が必要なものが増えれば増えるほど費用が増えたりするなど、それなりに多くのお金が必要です。シングルで、どうしても終活を1人で完結させるのが難しい方は活用するのも一手でしょう。しかし、「終活」はお金やモノの整理だけではなく、「心の整理」も大事です。できれば、家族とコミュニケーションを取りながら、みんなで取り組んでほしいと思いますね。
有野:そんな素敵な話を聞くと、「自分が死んで、奥さんや娘たちにグラビア見られたくないから終活せなあかん!」なんていう考えが恥ずかしくなってきました……(笑)まずは帰って「ありがとう」を言葉で伝えて、終活の手伝いをしてもらおう。
次回(7月25日配信予定)は「相続と遺言」について聞いていきます。
2時間目:よゐこ有野、終活の現実を知りショック「結構な金額…」
3時間目:よゐこ有野「いやらしいわぁって…」親への【終活】の切り出し方に四苦八苦
4時間目:よゐこ有野、相続で揉めるケースに驚き「莫大な遺産があって、じゃないんだ」
有野晋哉
1972年2月25日生まれ。大阪府出身。テレビやラジオ、CM、雑誌の連載などマルチに活躍。コンビで公式YouTube「よゐこチャンネル」も開設しており、幅広い世代から支持を得ている。自身が50歳を迎えた2022年に、お金にまつわる知識の大切さに目覚め、日々勉強中。
井戸美枝
井戸美枝事務所代表。神戸生まれ、関西大学社会学部卒。1990年に社会保険労務士の資格を取得し、神戸市内に社会保険労務士事務所を設立。1993年にはAFPの資格を取得。1996年にはCFP認定者となり、社保労務士に加えてFP業務も展開する。生活に身近な経済問題や年金・社会保障問題を中心に、新聞や雑誌で連載を持つなど幅広く活躍。「難しいことでもわかりやすく」がモットー。著書に『親の終活 夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!増補改訂版』(日経BP)ほか多数
ライター:新井奈央