はじめに
「親への取材」で情報を拾い出す
井戸:コロナ禍だったこともあって、最近では自分の親と顔を合わせるケースが減っていると思います。そうなると、お盆や年末年始などの連休の際に、一気に物事を進めたくなりますよね。でも、久しぶりに会った息子から、いきなり終活や相続の話を切り出されても、身構えてしまうのは当然かもしれません。
有野:それで「ちょっと旅行行こうか、全部出すわ」って連れて行って、「この薬飲んでみ、身体にいいねんて」なんて小さい薬出したら、「絶対飲まへんで!」って言われるし、すぐお兄ちゃん呼ばれて「晋哉、何してんねん!」てボコられる。51歳でお兄ちゃんにボコられたくないです(笑)
井戸:なので、まずは「親に取材をしてみる」ところから始めるべきです。コロナ禍の間に何をしていたのか、何かしたいことはないのか。昔の思い出話などを持ち出して、少しずつ親の気持ちをほぐしてあげるのもいいかもしれません。さらに、身体の調子、持病、かかりつけの医者などを聞き出すことで、親との関係性を深めていくといいでしょう。
有野:なるほど、「親に取材する」か。先生、今回は名言が多いですね(笑)
井戸:親への取材の必要性は、私の著書でも書いていますし、名言でも何でもないです(笑) とにかく、いきなり核心に触れず、会話を続けることが大切ですね。世間話の中から、情報を拾っていくことです。たとえば、「誰々さんが倒れはって、いま入院してんねん」などという話があれば、「そういえばおかんが倒れた時は、お金とか問題ないん?」と切り出して見たり。いま親が困っていることを1つ1つ聞いていくのが有効ですね。
有野:そうですね。実家帰ったときに、「何の薬飲んでんの?」って聞いたらすごく細かく説明してくれましたわ。「いや、そんなに聞いてへんし」って言ってしまったけど、「大変やな。でも、よくなってるなら良かったわ。長生きしてもらわんと」とか、ちゃんと伝えるのが大事ですね。
井戸:そうやって外堀を埋めていって、本人の意向がなんとなくつかめてきたら、ようやく「終活」や「相続」を切り出してみるといいかもしれません。あとは、「自分も終活を始めている」ことをアピールするのも一手です。
有野:「いま終活がはやってんねん。俺もやろうと思ってるし、オカンも一緒にどう?」みたいな感じですかね。
井戸:親との関係性によって事情変わると思いますが、関西だと軽いノリで聞くと、軽いノリで返されるかもしれませんね(笑) 深刻になる必要はありませんが、真面目な姿勢を見せることも必要でしょう。
有野:真面目な姿勢か~、どうしてもふざけてしまいそうやなぁ(笑)
井戸:有野さんのケースでしたら「自分も50歳になって、老後のことを考え始めている。オトンの時は、オトンについてなんも知らなかったから、大変だったよね? 自分が倒れた時、奥さんや子どもに同じ苦労を味わって欲しくないし、終活を始めている。これは、親や夫としての責任だと思っている。オカンも一緒に考えてみない?」といったような感じが良さそうですね。
有野:おぉ~、今度は名言ならぬ名シナリオや! 親としての責任という言葉はいいですね、そう切り出されると嫌な気持ちにはならへんし、向き合わないとってなりますね。これが正解だったかぁ〜、いただきました(笑) 「僕なぁ、51歳になって、老後のことを考え始めているねんけどぉ。ほら、オトンの葬式の時、オカンも兄ちゃんもお姉ちゃんもオトンの好きだった曲もわからなくて……」アカン、にやけてしまう!
井戸:どのような切り出し方がベストなのかは、十人十色でしょう。ただ親や夫、あるいは妻としての責任を感じている姿勢をきちんと見せることで、親にも真剣に考えてもらえるはずです。